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実際の血中濃度データにコンパートメントモデルを当てはめる時は、血中濃度データを片対数でプロットするとおおよその見当を付けることができます。 図14.3.19と図14.3.20に示したようにプロットがほぼ1本の直線上に並んでいれば1コンパートメントモデルが当てはまり、2本に折れ曲がって並んでいれば2コンパートメントモデルが当てはまります。 そして皮むき法を適用する時はプロットが折れ曲がっている部分から皮むきを始めます。
人間のデータでは、静注の場合は2コンパートメントモデルが最も当てはまりやすいようです。 そしてし内服の場合は吸収が速い薬物については2コンパートメントモデルが、吸収が遅い薬物については1コンパートメントモデルが最も当てはまりやすいようです。 また溶解時間が無視できない錠剤等の薬剤を内服した時は、原則としてラグタイムモデルが当てはまります。
複雑なモデルはパラメーター数が多く、データを説明する要因が増えるので必然的にモデルの当てはまりが良くなります。 しかしモデルが複雑なほどパラメーターの解釈が困難になり、実用的ではなくなります。 実際問題として3コンパートメント以上のモデルでは、血中濃度データだけでは全てのパラメーターを求めることはできないので実用的ではありません。
したがってなるべく簡単で、しかも実際のデータの変化をうまく説明できるようなモデルを選択することが重要です。 そこでモデルの良し悪しの目安として赤池の情報量基準AIC(Akaike's Information Criterion)を用いることがあります。 (→7.3 変数の選択 (注2)、9.3 1変量の場合 (注1))
しかし現象論的にモデルがいくらうまくデータに当てはまったとしても、そのモデルを正当とする薬理学的な根拠がなければ意味がありません。 むしろ本来は実験前に薬理学的な根拠に基づいて仮説を立て、それに従って適切なモデルを選択して結果を予測しておくべきです。 そして実験を行って結果が予測通りなら、モデルとその根拠になった仮定を暫定的に正しいと判断します。
しかし結果が予想と違ってデータにモデルがうまく当てはまらなければ、モデルとその根拠になった仮定を修正する必要があると判断します。 そしてその際、色々なモデルを試してみて、もしうまく当てはまるものがあれば仮定を修正するための参考になります。