玄関雑学の部屋雑学コーナー統計学入門

(7) 内服1コンパートメント1次徐放モデル(徐放剤または軟膏1コンパートメント1次徐放モデル)

用量q0の徐放剤を吸収部位に投与し、徐々に溶けて血液区画に分布して、徐々に体外に排出されるモデル。 このモデルは、用量q0の軟膏を吸収部位に貼り、徐々に吸収されて血液区画に分布して、徐々に体外に排出される場合にも当てはまります。 このモデルでは薬物の放出速度は残余量に比例する、つまり1次速度過程とします。 (注1)

表14.3.5 徐放剤投与後の血中濃度データ
時間(hr)0123456810121416
血中濃度 00.431.64253.480834.961676.687.588338.480839.054179.6458310.564210.5117
時間(hr)182022242832364044486072
血中濃度 9.374178.203337.366.645834.99753.489172.575832.07751.6051.1850.4583330.185833
図14.3.13 内服1コンパートメント1次徐放モデルの模式図 図14.3.14 内服1コンパートメント1次徐放モデル関数のグラフ
Cc(t) = A{(β - γ)exp(-αt) + (γ - α)exp(-βt) + (α - β)exp(-γt)} (β > γ > α)
q0 = 100  f = 1(100%)と仮定する
  kr = α = 0.0887869   ka = β = 0.43264  ke = γ = 0.129914
     ClT = keVc = 0.366295

剤形が軟膏の時は途中で軟膏を拭い去ることがあります。 その場合、拭い去った後は血中濃度関数の形が少し変わります。 表14.3.5が軟膏を貼ってtr = 14時間後に拭い去った時のデータとすると、結果は次のようになります。 (注2)

図14.3.15 軟膏1コンパートメント1次徐放モデルの血中濃度関数
○t > trの時(T = t - tr)
Cc(t) = A{(β - α)exp(-αtr - γT) - (γ - α)exp(-αtr - βT) + (γ - α)exp(-βt) + (α - β)exp(-γt)}
A = 314.479  kr = 0.0584044  ka = 1.11318   ke = 0.0643937  Vc = 3.12031   ClT = 0.200928

trまでに放出された薬物量:q0r = q0{1 - exp(-krrr)} = 55.85372

(注1) 内服1コンパートメント1次徐放モデルの微分方程式は次のようになります。 軟膏の場合、軟膏を貼ってからtr時間後に拭い去った後の微分方程式は、vr = 0になって(1)の微分方程式が無くなり、(2)と(3)のtをT = t - trで置き換えたものになります。

… (1)
… (2)
… (3)

表14.3.5の血中濃度を対数変換して16〜72時間をα相つまり放出相、8〜14時間をγ相つまり排出相、0〜6時間をβ相つまり吸収相と考えて皮むき法を適用します。 徐放剤の場合はこのような皮むき法によってパラメーターA、α、β、γを求めます。

A = 305.671  α = 0.0721626  β = 0.393733  γ = 0.254574

これらの値を初期値としてガウス・ニュートン法でパラメーターを求めると、180回以上の反復計算の結果、次のような値に収束します。

推定値:A = 318.235  α = 0.0887869  β = 0.4326  γ = 0.129914
標準誤差:A = 639.068  α = 0.038797  β = 0.134351  γ = 0.0782569

(注2) 表14.3.5の血中濃度を対数変換して32〜72時間をα相、14〜28時間をγ相と考え、皮むき法によってパラメーターA、α、β、γを求めると次のようになります。

A = 91.4582  α = 0.0692044  β = 1.337  γ = 0.0861768

これらの値を初期値としてガウス・ニュートン法でパラメーターを求めると、50回以上の反復計算の結果、次のような値に収束します。

推定値:A = 314.479  α = 0.0584044  β = 1.11318  γ = 0.0643937
標準誤差:A = 1347.09  α = 0.0218448  β = 0.491289  γ = 0.00316293