玄関雑学の部屋雑学コーナー統計学入門

(8) 内服1コンパートメント0次徐放モデル(徐放剤または軟膏1コンパートメント0次徐放モデル)

用量q0の徐放剤を吸収部位に投与し、tr時間の間、一定速度で薬物を放出して血液区画に分布し、徐々に体外に排出されるモデル。 このモデルは用量q0の軟膏を吸収部位に貼り、tr時間の間、一定速度で薬物を放出して血液区画に分布し、徐々に体外に排出される場合にも当てはまります。 このモデルでは薬物の放出速度は一定つまり0次速度過程とします。 (7)と同じ表14.3.5のデータにこのモデルを当てはめると次のようになります。 (注1)

表14.3.5 徐放剤投与後の血中濃度データ
時間(hr)0123456810121416
血中濃度 00.431.64253.480834.961676.687.588338.480839.054179.6458310.564210.5117
時間(hr)182022242832364044486072
血中濃度 9.374178.203337.366.645834.99753.489172.575832.07751.6051.1850.4583330.185833
図14.3.16 内服1コンパートメント0次徐放モデルの模式図 図14.3.17 内服1コンパートメント0次徐放モデル関数のグラフ
○t ≦ trの時
Cc(t) = A[α{1 - exp(-βt)} - β{1 - exp(-αt)}]
○t > trの時(T = t - tr)
Cc(t) = A[α{exp(-βT)} - exp(-βt)} - β{exp(-αT)} - exp(-αt)}]
q0 = 100  f = 1(100%)と仮定する
  tr = 14.8043     ka = α = 21.5141   ke = β = 0.0707583
  AUC(∞) = A tr(α-β) = 270.255   ClT = keVc = 0.370021

徐放剤の場合は放出時間trをパラメータの1つとして上記のようにデータから推定しますが、軟膏の場合は定数として最初から指定します。 表14.3.5を軟膏を貼ってtr = 14時間後に薬物を放出し終わった時のデータとすると、結果は次のようになります。 (注2)

図14.3.18 軟膏1コンパートメント0次徐放モデルの血中濃度関数
tr = 14  A = 3.32053  k0 = 7.14286   ka = 5.9591  ke = 0.0665878   Vc = 5.48239  AUC = 273.928  ClT = 0.36506

(注1) 内服1コンパートメント0次徐放モデルの微分方程式は次のようになります。 tr時間経って放出が終わった後の微分方程式は、vr = 0になって(1)の微分方程式が無くなり、(2)と(3)のtをT = t - trで置き換えたものになります。

… (1)
… (2)
… (3)

表14.3.5の血中濃度を対数変換して放出時間を14時間と考え、16〜72時間をβ相つまり排出相、8〜14時間をα相つまり吸収相、0〜6時間を放出相として、皮むき法によってパラメーターを求めると次のようになります。

tr = 14  A = 12.2289  α = ka = 0.423287   β = ke = 0.147693

これらの値を初期値としてガウス・ニュートン法でパラメーターを求めると、60回以上の反復計算の結果、次のような値に収束します。

推定値:tr = 14.8043  A = 0.851324  ka = 21.5141   ke = 0.0707583
標準誤差:tr = 0.64258  A = 5.83951  ka = 146.072   ke = 0.00527314

(注2) 表14.3.5の血中濃度を対数変換して放出時間を14時間とし、14〜72時間を排出相、6〜12時間を吸収相、0〜5時間を放出相として、皮むき法によってパラメーターを求めると次のようになります。

A = 5.25745  ka = 1.337  ke = 0.120779

これらの値を初期値としてガウス・ニュートン法でパラメーターを求めると、50回以上の反復計算の結果、次のような値に収束します。

推定値:A = 3.32053  ka = 5.9591  ke = 0.0665878
標準誤差:A = 5.06038  ka = 9.0765  ke = 0.00470447