前口上 | 目次 | 第1章 | 第2章 | 第3章 | 第4章 | 第5章 | 第6章 | 第7章 | 第8章 | 第9章 | 第10章 |
第11章 | 第12章 | 第13章 | 第14章 | 第15章 | 第16章 | 第17章 | 第18章 | 第19章 | 第20章 | 付録 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
この章では生物検定と薬効評価の違い、用量反応直線またはプロビット変換を利用した平行線検定法、勾配比検定法、そしてD50の推定法について解説します。
薬学分野では生物——ヒト、動物、植物、微生物等——の反応を利用して物質の生物活性の質や量を調べることがあります。 例えばある化学物質の毒性を調べるために、マウスを使ってLD50(対象とする母集団の50%の個体が死亡する量、50%致死量、中央致死量、median lethal dose)を推定するのがその代表例です。 これは生物を秤として生物活性を定性・定量する試験法であり、生物(学的)検定法(bioassay、biological assay)と呼ばれます。
それに対して生物の反応を利用して物質の生物活性自体の薬理的な評価を行うこともあります。 例えばある化学物質の薬理的な効果つまり薬効を調べるために、その化学物資を一定量投与した患者と、投与しない患者の反応を比較するのがその代表例です。 これは生物を秤として薬効を調べる試験法であり、薬効評価(pharmacometrics)と呼ばれます。 大雑把にいえば反応を固定して用量の変化を検討するのが生物検定法であり、用量を固定して反応の変化を検討するのが薬効評価と考えれば良いでしょう。
以前は自然界の物質を薬物として利用していて、生物活性を持つ化学物質が明確に同定されていないものが多かったので生物検定法が盛んに利用されました。 しかし近年になり生物活性を持つ化学物質が明確に同定されるようになると、生物検定法の重要性は低くなり、生物活性自体の薬理的な評価の方が重要になってきました。 そのため最近では薬効評価という用語は生物検定法も含めた広義の意味で使われることが多くなり、生物検定法という用語が使われることは少なくなっているようです。
生物検定法では薬物の用量と反応の関係を調べ、それに基づいて特定の反応を起こす時の用量を推定します。 そのため薬物の用量反応関係(dose-response relationship)を分析するのに適したデータが得られるように試験をデザインします。 最も単純な試験デザインとして、例えば40匹のマウスを無作為に10匹ずつ4群に分け、それぞれの群にある薬物を1mg/kg(マウスの体重1kgあたり1mgの用量)、2mg/kg、4mg/kg、8mg/kgを投与するというものが考えられます。 このデザインの試験を実施して、マウスの反応を適当な方法で数値化したところ表13.1.1のようになったとします。
群内No. | 1mg投与群 | 2mg投与群 | 4mg投与群 | 8mg投与群 | 全体 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 774 | 848 | 925 | 919 | |
2 | 776 | 875 | 917 | 969 | |
3 | 816 | 858 | 912 | 924 | |
4 | 808 | 823 | 912 | 902 | |
5 | 773 | 858 | 949 | 880 | |
6 | 707 | 891 | 908 | 956 | |
7 | 774 | 843 | 908 | 964 | |
8 | 819 | 870 | 989 | 948 | |
9 | 852 | 872 | 931 | 983 | |
10 | 816 | 881 | 909 | 985 | |
計 | 7915 | 8619 | 9260 | 9430 | 35224 |
平均値 | 791.5 | 861.9 | 926.0 | 943.0 | 880.6 |
標準誤差 | 12.6 | 6.4 | 8.1 | 11.2 | 10.7 |
多くの薬物は用量を対数変換した対数用量と反応が正比例するので、薬理学分野では用量のデータとして対数用量を用います。 そのため用量反応試験では表13.1.1のように用量を対数スケールで等間隔になるようにデザインするのが普通です。 そして対数用量と反応の関係を直線で近似して用量反応関係を分析します。 その直線のことを用量反応直線(Dose-Response Line)といい、次のような式で表されます。 (→第14章 薬物動態学)
この式は実際には対数用量反応直線であり、対数用量を元の用量に戻した場合は用量反応曲線(Dose-Response Curve)になります。 しかし普通は用量を広義に解釈して、この式で表される直線のことを用量反応直線と呼んでいます。
一般に対数用量と反応の関係を直線で近似するには回帰分析を用います。 例えば表13.1.1のデータでは4群の平均値に回帰直線をあてはめます。 しかし表13.1.1のデータは一元配置型のデータですから、一元配置分散分析と回帰分析を組み合わせた一元配置型回帰分析を適用することができます。 表13.1.1にその手法を適用すると次のようになります。 (注1)
要因 | 平方和SS | 自由度φ | 平均平方和Ms(分散V) | 分散比F |
---|---|---|---|---|
回帰 | 134473 | 1 | 134473 | 138.057 |
ズレ | 7961.22 | 2 | 3980.61 | 4.08671 |
用量 | 142434 | 3 | 47478.1 | 48.7435 |
残差 | 35065.4 | 36 | 974.039 | |
全体 | 177500 | 39 |
表13.1.2の「用量」は4群の平均値の変動を表し、「回帰」はその変動の中で用量反応直線で説明できる変動を表し、「ズレ」は用量反応直線で説明できない変動つまり非直線的な変動を表します。 そのため回帰の平方和とズレの平方和を合計したものが用量の平方和になり、回帰の自由度とズレの自由度を合計したものが用量の自由度になります。 また「用量」以下は通常の一元配置分散分析表に相当します。
このデータでは回帰の検定結果もズレの検定結果も用量の検定結果も有意になっています。 このことから反応の平均値は用量によって変動する、つまり用量依存性——用量反応関係——があり、その用量反応関係は直線で表される部分と直線では表せない非直線的な部分とがあるということがわかります。 図13.1.1を見ると反応の平均値は1mg投与群から4mg投与群まではほぼ直線的に増加し、8mg投与群だけが少し増加分が減っている、つまり用量が8mgになると反応が少し鈍くなっていることがわかります。 そこで8mg投与群を除外し、あらためて一元配置型回帰分析を適用すると次のようになります。
要因 | 平方和SS | 自由度φ | 平均平方和Ms(分散V) | 分散比F |
---|---|---|---|---|
回帰 | 90451.3 | 1 | 90451.3 | 102.598 |
ズレ | 66.15 | 1 | 66.15 | 0.075 |
用量 | 90517.4 | 2 | 45258.7 | 51.3366 |
残差 | 23803.4 | 27 | 881.607 | |
全体 | 114321 | 29 |
この場合は回帰の検定結果も用量の検定結果も有意ですが、ズレの検定結果が有意ではなくなっています。 このことから用量反応関係は少なくとも1mg〜4mgの範囲では直線的であり、それ以上の用量になると反応が少し鈍くなる可能性があることがわかります。
ちなみに用量を対数変換せず、実用量のまま一元配置型回帰分析を適用すると次のようになります。
要因 | 平方和SS | 自由度φ | 平均平方和Ms(分散V) | 分散比F |
---|---|---|---|---|
回帰 | 106869 | 1 | 106869 | 109.717 |
ズレ | 35565.2 | 2 | 17782.6 | 18.2565 |
用量 | 142434 | 3 | 47478.1 | 48.7435 |
残差 | 35065.4 | 36 | 974.039 | |
全体 | 177500 | 39 |
要因 | 平方和SS | 自由度φ | 平均平方和Ms(分散V) | 分散比F |
---|---|---|---|---|
回帰 | 86315.3 | 1 | 86315.3 | 97.9068 |
ズレ | 4202.06 | 1 | 4202.06 | 4.76637 |
用量 | 90517.4 | 2 | 45258.7 | 51.3366 |
残差 | 23803.4 | 27 | 881.607 | |
全体 | 114321 | 29 |
上記の結果と図13.1.2から実用量を用いた時は用量反応直線の当てはまり具合が少し悪く、しかも4群を用いた時も3群を用いた時もズレが大きいことがわかります。 このことから、この薬物の用量反応関係を分析する時は対数用量を用いた方が良いことがわかります。 このように一元元配置型回帰分析は用量反応関係と用量反応直線の検定だけでなくズレの検定もできるので、用量反応直線の妥当性を詳細に検討することができます。
ただし普通の一元配置分散分析と同様に、この手法の検定もたいていは有意性検定になります。 そのため検定結果よりも用量反応直線そのものや寄与率を科学的に検討する方が有意義です。 このデータの場合はどの用量反応直線も寄与率が高く、回帰係数も大きな値ですから、各用量反応直線を比較して最も妥当なものを検討をすることに意味があると考えられます。
用量反応直線を利用すると特定の用量の時の反応を予測することができます。 しかし生物検定法では特定の反応の時の用量を用量反応直線を利用して逆推定します。 その方法は標準物質濃度と吸光度の検量線を利用して、未知物質の濃度を逆推定する一般的な方法と同じです。 つまり生物の反応を吸光度のように考え、用量反応直線を検量線にして薬物の生物活性の量を測定するわけです。 例えばある薬物をマウスに投与して、その反応が850だったとします。 その時の用量とその95%信頼区間を3群を用いた用量反応直線を利用して求めると次のようになります。 (注2)
また例えば反応の数値には±50程度の測定誤差があるので、反応の数値が50以上変化しなければ薬理学的には意義がないことが判明しているとします。 この時、用量反応直線を利用すれば、用量が何倍になれば薬理学的に意義のある反応の変化が得られるかを推定することができます。 上の用量反応直線の回帰係数223.4は、x = log(用量)が「1」変化した時つまり用量が10倍になった時の反応yの変化量を表します。 このことから反応yが50変化する時の用量の倍率を推定すると次のようになります。
この計算結果から用量が約1.7倍になると反応が50以上増加し、薬理学的に意義のある変化になることがわかります。 したがって表13.1.1のように用量を2倍にした4群の反応は、それぞれ薬理学的に有意義に増加していることになります。
用量反応関係を検討する時、一元配置型回帰分析を用いずに一元配置分散分析だけを用いたり、各用量群の平均値を多重比較したりすることがあります。 例えば表13.1.1のデータに一元配置分散分析とダネット型多重比較を適用すると次のようになります。 (注3) (→4.1 多標本の計量値)
要因 | 平方和SS | 自由度φ | 平均平方和Ms(分散V) | 分散比F |
---|---|---|---|---|
用量 | 142434 | 3 | 47478.1 | 48.7435 |
残差 | 35065.4 | 36 | 974.039 | |
全体 | 177500 | 39 |
上記のように一元配置分散分析表は表13.1.2の「用量」以下と同じになり、用量の検定結果も同じになります。 そして多重比較では1mg投与群の平均値と他の3群の平均値の差は全て有意水準5%で有意になります。
また用量反応関係を検討する場合、普通のダネット型多重比較ではなく、逐次的なダネット型多重比較であるウィリアムズの多重比較(Williams's multiple comparison)という手法を用いることもあります。 この手法は2mg投与群〜8mg投与群の平均値は必ず増加または横ばいになり、低下することはないという前提で、用量の多い群から順番にダネット型多重比較を行っていきます。 そして有意ではなくなったところで、それ以下の用量は全て有意ではないという結論を採用して検定を終了する手法です。 検定を途中で終了するので普通のダネット型多重比較よりも検定回数が少なくなり、その分だけ検定効率が高くなります。
ちなみに表13.1.1のデータは普通のダネット型多重比較でも全ての比較が有意になっているので、ウィリアムズの多重比較を適用しても結果は変わりません。
ダネット型の多重比較ではなく、シェッフェ型の多重比較の中の一般対比という手法を応用して、用量反応関係が特定のパターンかどうかを検討する最大対比法(maximum contrast method)という手法もあります。 例えば表13.1.1のデータについて1mg投与群から8mg投与群まで直線的に増加すると仮定した直線的増加パターンと、1mg投与群から4mg投与群までは直線的に増加し、8mg投与群は4mg投与群と同じと仮定した頭打ちパターンの2種類について検定すると次のようになります。 (注4)
上の結果中の寄与率は一元配置型回帰分析の寄与率と同様の値であり、平均値の変動のうち係数で表されるパターンによって説明できる割合つまりパターンの当てはまり具合を表します。 上記の結果を見るとどちらの検定結果も有意ですが、直線的増加パターンよりも頭打ちパターンの方が寄与率が高く、用量反応関係はどちらかといえば後者のパターンの方に近いことがわかります。
多重比較法や最大対比法は用量反応関係を定性的なパターンとして検討するための手法であり、用量と反応の計量的な関係を検討するための手法ではありません。 実際、これらの手法は用量の値を計算に用いず、用量の順序という情報しか用いていないので対数用量でも実用量でも全く同じ結果になります。 そのため用量反応直線のように特定の反応の時の用量を逆推定したり、薬理学的に有意義な反応をする時の用量の倍率を求めたりすることはできません。
多重比較法や最大対比法は用量を順序尺度扱いしますが、用量だけでなく反応も順序尺度扱いするヨンクヒール・タプストラ(Jonckheere-Terpstra)検定という手法もあります。 この手法はマン・ホイットニィのU検定を利用したノンパラメトリック手法であり、用量が多くなるほど反応の順位平均値が増加するかどうかを検定することによって用量反応関係を定性的に検討します。
しかし用量も反応も順序尺度扱いするのなら、むしろスピアマンの順位相関係数を利用して用量の順位と反応の順位の間に関連性があるかどうかを検討する方がわかりやすいでしょう。 例えば表13.1.1のデータにヨンクヒール・タプストラ検定とスピアマンの順位相関係数を適用すると次のようになります。 (注5) (→3.4 2標本の計数値、5.3 計数値の相関分析と回帰分析)
ヨンクヒール・タプストラ検定の統計量JTはマン・ホイットニィのU検定のU統計量を拡張した指標です。 そしてJTの理論的最大値がTmaxであり、JTをTmaxで割って100を掛けた値がU検定の勝率に相当します。 この勝率が50%よりも大きければ、用量が多くなるほど反応の順位平均値が増加することを表します。 このデータの場合、JTの割合が約93%とかなり大きな値です。 しかしこの値から用量反応関係の大きさを具体的に解釈するのは難しいでしょう。
それに対してスピアマンの順位相関係数は解釈が容易です。 このデータの場合、順位相関係数が約0.9もあるので、用量の順序と反応の順序の間に強い関連性があることがすぐわかります。 そして上記のように、ヨンクヒール・タプストラ検定とスピアマンの順位相関係数の検定結果はよく似ています。 このことからノンパラメトリックな用量反応関係を検討するにはヨンクヒール・タプストラ検定よりもスピアマンの順位相関係数の方が便利なことがわかると思います。
ただし生物検定法では用量反応関係が直線的な部分を検量線のように利用して生物活性を定量し、薬剤の常用量も用量反応関係が直線的な範囲内で設定するのが普通です。 そのため多重比較法や最大対比法やノンパラ手法を用いて用量反応関係を検討しても、最終的には用量反応直線を求める必要があります。 したがって用量反応解析としては一元配置型回帰分析によって用量反応直線を求めるのが合理的であり、多重比較法や最大対比法やノンパラ手法を用いるのはお勧めできません。
群内No. | 対数用量 | 全体 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
x1 | … | xi | … | xa | ||
1 | y11 | … | yi1 | … | ya1 | |
: | : | … | : | … | : | |
j | y1j | … | yij | … | yaj | |
: | : | … | : | … | : | |
ri | y1・r1 | … | yi・ri | … | ya・ra | |
計 | T1. | … | Ti. | … | Ta. | TT |
平均値 | m1. | … | mi. | … | ma. | mT |
一元配置型回帰分析ではデータyijを次のように2通りに分解して考えます。
この基本式に対応する平方和と自由度と分散、そして直線回帰式を求めると次のようになります。
上式からわかるように、回帰の平方和は個々のデータyiiを使わずに用量xiと用量群ごとの平均値mi.に例数riかけて計算することができます。 つまり一元配置型回帰分析では用量xiを説明変数に、用量群の平均値mi.を目的変数にし、用量群の例数の平方根√(ri)を重みとした重み付け最小2乗法によって直線回帰式を求めているわけです。
通常、平均値を用いる重み付け最小2乗法では平均値の標準誤差の逆数(1/SE)を重みにします。 しかし一元配置分散分析は各群の分散は等しいと仮定して計算するので、一元配置型回帰分析でも各用量群の分散は等しいと仮定して計算します。 そのため(1/SE)を重みとした重み付け最小2乗法は、√nを重みとした重み付け最小2乗法同じ結果になるのです。
これらの平方和の関係をグラフで表すと図13.1.4のようになります。 そして平方和と自由度と分散を表13.1.8のような一元配置型回帰分析表にまとめます。
要因 | 平方和SS | 自由度φ | 平均平方和Ms(分散V) | 分散比F |
---|---|---|---|---|
回帰 | Sβ | φβ | Vβ | Fβ = Vβ/VR |
ズレ | SLOF | φLOF | VLOF | FLOF = VLOF/VR |
用量 | SD | φD | VD | FD = VD/VR |
残差 | SR | φR | VR | |
全体 | ST | φT |
表13.1.1のデータについて実際に計算してみましょう。
これらの統計量を用いて表13.1.2の一元配置型回帰分析表を作成し、用量反応直線を求めて回帰、ズレ、用量の検定を行うことができます。
実際の薬物の用量反応関係はシグモイド曲線(S字状曲線)になるのが普通です。 そこでシグモイド曲線の中でも数学的な取り扱いが比較的容易なロジスティック曲線で用量反応関係を近似することが考えられます。 実際、第4節で説明するプロビット分析をロジスティック曲線を用いたロジット分析で近似することがあります。 (→9.6 ロジスティック曲線 (注1))
このロジスティック関数においてyを反応、tを対数用量x、Mを反応の最大値、cを比例対数としたものが用量反応曲線になります。 そして反応yをロジット変換すると用量ロジット直線になります。
この用量ロジット直線を利用すると、用量反応直線と同様の一元配置型回帰分析による用量反応解析を行うことができます。 ただしyをロジット変換するには何らかの方法でMを推定する必要があります。 例えば非線形最小2乗法によってロジスティック関数のパラメータM、c、y0を求め、そのMを用いるという方法が考えられます。
そこで表13.1.1のデータに非線形最小2乗法を適用してロジスティック関数のパラメータを求めたところ、M = 1007.99という推定値が得られました。 このMを用いて用量ロジット直線を利用した用量反応解析を行うと次のような結果になります。
要因 | 平方和SS | 自由度φ | 平均平方和Ms(分散V) | 分散比F |
---|---|---|---|---|
回帰 | 13.8126 | 1 | 13.8126 | 72.8475 |
ズレ | 0.284592 | 2 | 0.142296 | 0.750466 |
用量 | 14.0972 | 3 | 4.69907 | 24.7828 |
残差 | 6.82596 | 36 | 0.18961 | |
全体 | 20.9232 | 39 |
上の結果と図13.1.5を見ると、用量反応直線よりも用量反応曲線の方が平均値により近似していて寄与率が高く、用量の逆推定値もより正確な値であることがわかります。 このロジスティック曲線を利用した用量反応解析は用量群が4個未満だったり、最大用量群の反応平均値が反応最大値Mよりもかなり小さい時(だいたいM×0.8未満)はうまく計算できません。 しかし実際の用量反応関係を用量反応直線よりもうまく近似できるので、用量群の数が多い時には非常に有用な方法です。
上記のように、逆推定した用量x0は(y0 - a)とbの比になります。 この場合、aにもbにも誤差があるのでx0の信頼区間は少し複雑になります。 一般に2つの確率変数の比の100(1-α)%信頼区間はフィーラー(Fieller)の式と呼ばれる次のような式で求めます。
このフィーラーの式を利用してx0の100(1-α)%信頼区間を求めると次のようになります。 (→5.5 各手法の相互関係 (注3))
用量反応直線に関する反応yの100(1-α)%予測限界は次のようになります。 この予測限界曲線とy = y0の交点つまりy = y0の時のxを求めてみましょう。
このように2本の予測限界曲線上でy = y0になる時のxは、g = 0とした時のx0の100(1-α)%信頼区間に相当します。 つまり反応y0の時の用量x0はy = y0と用量反応直線の交点の用量になり、その信頼区間はy = y0と2本の予測限界曲線の交点付近の用量になるわけです。
表13.1.1の1mg〜4mgのデータだけを使った時の用量反応直線を利用して、反応が850の時の用量とその95%信頼区間を計算してみましょう。
ウィリアムズの多重比較では、最初に用量が最も多い群と対照群についてダネット型の多重比較と同じ検定統計量dを計算します。 それをダネット型数表を少し変更したウィリアムズ型数表の100α%点の値w(a,φR,α)と比較し、d < w(a,φR,α)なら全ての用量が有意水準αで有意ではないとして検定を終了します。
d > w(a,φR,α)なら用量が最も多い群と2番目に用量が多い群を一緒にして例数と平均値を計算し、これと対照群について検定統計量dを計算します。 それをw(a-1,φR,α)と比較し、d ≦ w(a-1,φR,α)なら2番目に用量が多い群以下の用量は全て有意水準αで有意ではないとして検定を終了します。 d > w(a-1,φR,α)なら次は3番目に用量が多い群を一緒にして同様の検定を行い、これを対照群以外の群について繰り返します。
この方法は途中で検定を中止するので、普通のダネット型検定よりも効率的です。 しかし「用量が多くなるほど反応が増加するか横ばいである」という前提が必要なので、ダネット型よりも適用範囲が狭くなります。 またダネット型多重比較もウィリアムズの多重比較も単に用量反応があるかどうかを定性的に検定するための手法であり、用量と反応の計量的な関係を検討するための手法ではありません。 そのため用量反応解析では使い道はあまりありません。
表13.1.7において用量xiの代わりに係数Ciを用いて一元配置型回帰分析を行うと、回帰の検定が最大対比法のフィッシャー型検定になり、寄与率が最大対比法の用量反応パターンの寄与率になります。 表13.1.1のデータを用いて、直線的増加パターンと頭打ちパターンについて実際に計算してみましょう。
最大対比法は用量反応関係を定性的なパターンとして検討するための手法であり、用量と反応の計量的な関係を検討するための手法ではありません。 そのため用量反応解析では補助的な手法になります。
そのため表13.1.7のデータについて用量の小さい方を群1、用量の大きい方を群2としてU検定を適用すると、用量が増えると反応が増加する(または減少する)時は群2の勝率は50%よりも大きく(または小さく)なります。 そこで表13.1.7のデータについてx1群 vs x2群、x1群 vs x3群、…、x1群 vs xa群、x2群 vs x3群、…、x2群 vs xa群、…、xa-1群 vs xa群についてU検定を適用し、それらのU統計量を合計して勝率を求め、それが50%よりも大きいかどうかを検定すれば用量が増えるほど反応が増加するかどうかを定性的に検定できるはずです。
この原理に基づいて、ヨンクヒール・タプストラ検定は次のように計算します。