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解説5

被曝量と死亡率の用量反応解析

表4.2は白血病による死亡と同様にして白血病以外の全ガンによる死亡数と推定過剰死亡数、そして寄与リスク割合を表にし、被曝量とリスクの関係を表したものです。 この表に用量反応解析を適用すると次のような結果になります。

被曝量と白血病以外の
全ガン死亡確率の用量反応
被曝量(Sv)死亡確率(死亡数/対象者数)
00.0867639(4348/50113)
0.10250.0885009(3391/38316)
0.350.10241(646/6308)
0.750.106808(342/3202)
20.134674(308/2287)

上図から、被曝量と白血病以外の全ガン死亡確率の関係はプロビット曲線と直線がほぼ重なっていて、プロビット曲線が急上昇する前の死亡率が非常に小さい部分に相当することがわかります。 この場合の非被爆群の90%信頼区間を計算すると8.469〜8.884%になります。 プロビット曲線を利用して、死亡確率がこの信頼区間の上限値である0.08884(8.884%)になる時の被曝量を逆算すると0.0810Sv(81.0mSv)になります。 このことから0.0810Sv(81.0mSv)未満の被曝量については、その影響を判断できないことになります。

一方、医学的な誤差範囲は、例えば次のようにして推測します。 白血病では41年間で1万人あたり±41人の死亡つまり±0.041%を誤差範囲にしました。 1種類のガンの許容範囲をそれくらいにしたので、白血病以外の全ガン合計の誤差範囲はその10倍にして、41年間で1万人あたり41人の死亡つまり±0.41%を誤差範囲にしてみます。

この誤差範囲を非被爆群の死亡率に適用すると、8.67639±0.41%つまり8.26639〜9.08639%の範囲内の変動は実質的に死亡率の増減とはいえないことになります。 累積正規分布曲線を利用して、死亡確率がこの誤差範囲の上限値である0.0908639(9.08639%)になる時の被曝量を逆算すると0.171948Sv(171.948mSv)になります。

この閾値と信頼区間から求めた閾値を比べると、この閾値の方が被曝量が多くなっています。 このことから集団の閾値は約0.17Sv(170mSv)であり、これより低い被曝量の時は白血病以外の全ガンの死亡率の増減を事実上判断できないことになります。 上図の座標軸の下部に灰色で表示した領域が死亡確率に関する医学的な誤差範囲であり、赤色のプロビット曲線がこの範囲に入る時の被曝量が事実上の閾値になり、この灰色の範囲内では死亡率の増減を明確には判断できないわけです。

またプロビット曲線が急上昇する被曝量は2Sv以上と推測され、個々のガンに対する放射線の影響は白血病ほど敏感ではないと思われます。