という書き込みが当館の会議室に書き込まれたのは、東京電力福島第一原子力発電所1号機事故で世間が大騒ぎしている最中の2011年3月27日のことです。 巷では放射線の健康被害について錯綜した様々な情報が飛び交い、どの情報を信用したら良いのかみんなが戸惑っていたので、医学分野に詳しいこの常連さんが現在のところ最も信頼性の高い情報を紹介してくれたのです。
この資料は、「放射線および環境化学物質による発がん—本当に微量でも危険なのか?—」(佐渡敏彦・福島昭治・甲斐倫明編集、医療科学社、2005年)の「第4章 放射線による発がん」の一部であり、原爆傷害調査委員会・放射線影響研究所(放影研)が実施している原爆被爆者調査(寿命調査)の調査結果をまとめたものです。
寿命調査(LSS)は放射線が人の健康に及ぼす影響を研究するための疫学調査で、広島・長崎で原子爆弾に被爆した人を対象にして1950年から現在まで継続して行われています。 この調査は調査方法、対象者数、データの精度、追跡の完全性などの点から、現在のところ最も信頼性の高いものであり、定期的に発表される調査結果は、国際放射線防護委員会(International Commission Radiological Protection:ICRP)などで放射線防護基準を設定するための基礎資料として利用されています。
この資料は調査結果そのものつまり一次資料ではなく、調査結果をまとめたものの一部つまり二次資料です。
「二次資料は信用するな、必ず一次資料にあたれ! できれば生データを調べろ!!」
一次資料や生データをチェックしていないため、勝手に行った解析結果については間違っているところが多々あると思います。 また一般人向けにできるだけ簡単でわかりやい説明を心がけたので、学問的な厳密さを欠いたところが多々あります。 このため解析結果や学問的な内容よりも、考え方と結果の解釈方法に着目して読んでください。
なおこの資料は暗号化されている上にセキュリティがかかっていて、印刷することができません。 以後の説明を読む時は、ご面倒ですが上記の資料をダウンロードしていただき、内容をAcrobat Reader等で表示しながら読んだください。
解説の前に、1945年に広島、長崎で被爆した原爆被爆者を中心にした12万人もの寿命調査集団を、1950年から現在まで辛抱強く追跡調査されている放影研の研究者並びにスタッフの方々の熱意と努力に、最大級の敬意を表したいと思います。 この資料を見ていると、多くの被爆者の犠牲から得られた貴重なデータを、是が非でも人類のために役立てなければならないという関係者の方々の並々ならぬ熱意と執念が感じられて頭が下がります。
そういった敬意を常に払いながらも、できるだけ客観的かつ科学的に内容を検討していきたいと思います。