「あたし、伴ちゃんに恥ずかしいわ、本当に」
と言って、雪子さんはうっすらと涙の跡を残した目で伴ちゃんを見た。
結局、その夜の話し合いは、耕平氏も一度中川さんとの話し合いを考えてみるということで、僕等の優勢勝ちに終わり、僕の部屋で善後策を相談していたんだ。
「は?」と、伴ちゃん。
この夜の殊勲者は例によってポケーッと話を聞いてばかりいて、ほとんど口をきかなかった。
「どうして伴ちゃんみたいに、最初から素直に秀昭さんのこと父に話さなかったのかしら、あたし」
「それはあたしの責任よ、雪ちゃんじゃなくって。
この計画はあたしが思いついたんだもんね。
あーあ、あたしってやっぱダメだなあー……」
と言いながら、ミミちゃんは自分の頭をコツンとたたき、
「どーしても、伴ちゃんみたいに、純真にはなれないのよねー」
「それはしょーがないさ、ミミちゃん。
伴ちゃんはちょっと特別で、他の人があんなこと言っても、なかなか素直には受け取れんもんなのさ」
「そ、そんなことないよ、友規」
伴ちゃんがあわてて僕の言葉を否定して、
「みんなで、一生懸命頼んだから、持田さんのお父さんだって、考えてみる気になったんだと思うよ。
一生懸命やれば、誰だって、わかってくれるもんだと思うよ」
「そのとおりだと思うわ、あたしも。
あたし、もう一回、一生懸命父に頼んでみる。
そして、秀昭さんと一緒に素直に話し合ってみるわ。
父だってきっとわかってくれると思う……!」
そう言った雪子さんの顔には、強い決意の色と共に、晴れ晴れとした清々しい表情が浮かんでいた。