玄関雑学の部屋雑学コーナーポビドンヨード含嗽の観察研究

3.対照群の謎

本研究について誰もが疑問に思うことは対照群を「(ポビドンヨードを含まない)普通の水でうがいをする群」ではなく「うがいをしない群」にしたことでしょう。 うがいそのものにも色々な効果があるので、ポビドンヨードの効果を厳密に検討するためには対照群を「普通の水でうがいをする群」にしなければなりません。

少し前に、

「インフルエンザや風邪などでは普通の水でうがいをするだけである程度感染予防になり、ポビドンヨードを入れてもその効果はほとんど変わらない」

という研究結果が公表されて、かなり話題になりました。

本研究の目的は感染予防効果の検討ではなく唾液中のウイルス量を減らす効果の検討です。 そして普通の水でうがいをした時の唾液中のウイルス量を減らす――ウイルス濃度を薄める――効果は感染予防効果以上に大きいと考えられます。 そのため対照群を「普通の水でうがいをする群」にすると「ポビドンヨード含有水でうがいをする群」との差が小さくなり、ポビドンヨードの効果を検出できない危険性があります。

第1節で紹介した最初の研究成果公表案によると、本研究の次に実施する予定だった検証研究では含嗽無(うがいをしない)群、水含嗽(水でうがいをする)群、ポビドン含嗽(ポビドンヨードを含んだ水でうがいをする)群の3群比較をすることになっていたようです。 そこでまずは結果が出やすい「うがいをしない群」と「ポビドンヨード含有水でうがいをする群」を比較し、それがうまくいったら次に「水でうがいをする群」と「ポビドンヨード含有水でうがいをする群」を比較しようと計画していたのかもしれません。

対照群についてそのような憶測をしながら、プロトコールの試験デザイン部分を読んだところ意外なことがわかりました。 驚いたことにプロトコールでは試験群(ポビドンヨードの効果を検討するための群)は「ポビドンヨード通常含嗽群」になっていて、対照群は「ポビドンヨード遅延含嗽群」になっているのです! ところがプロトコールの「表3 観察・検査スケジュール」部分が黒塗りされているので、この「ポビドンヨード通常含嗽群」と「ポビドンヨード遅延含嗽群」の内容がわかりません。

そこで資料を色々と探したところ、被験者の方に渡す説明資料「COVID-19を対象としたポビドンヨード含嗽の臨床研究へのご協力のお願い」中の「4.研究の目的及びその意義」のところに、それらの群の内容が次のように説明されていました(興味のある方はリンク先からPDFファイルをダウンロードしてください)。

一体全体、どのような目的でこんな不可解な対照群にしたのでしょうか?