問題の研究は大阪はびきの医療センターで行われた「ポビドンヨード含嗽の観察研究(SARS-CoV2 感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたポビドンヨード含嗽の非盲検ランダム化臨床研究)」であり、研究名に貼ったリンク先から発表資料をダウンロードできます。
そしてこの研究と記者会見に関する資料が資料公開請求をされた沙和氏のnoteページ「第1回開示請求 ポビドンヨードうがい会見資料」にアップされていて、このページからダウンロードできます。 noteページには沙和氏が資料をざっと読んで気付いたことも書かれているので大いに参考になると思います。 特に次の点には、かなり政治的な意図が感じられます。
最初に、大阪府の吉村知事が記者会見をした時の資料の中から研究結果の部分を抜粋して紹介しましょう。 この説明と結果のグラフを見て疑問を抱かないデータ解析屋は、1960年以前の世界にタイムスリップしないとやっていけないでしょう。
あまりにも脱力感を抱かせる資料なので突っ込む気力をそがれますが、気を取り直して、この資料を見るとデータ解析屋なら次のような問題点にすぐに気付くと思います。
4番目の問題点については、次節以降で詳しく説明するように「うがいそのものをやらなかった」ことが判明しました。 これでは「うがいの効果+もしかしたらポビドンヨードの効果」ということになり、ポビドンヨードの効果を厳密に検討することはできません。 それから「うがいをしてから唾液によるRT-PCR検査をすれば陰性になるのは当然!」という至極当然のツッコミについては、やはり次節以降で説明するように多少は考慮されていました。
医学・薬学研究分野では、1960年代以後はEBM(Evidence-Based Medicine、根拠に基づく医療)が主流になり、実験計画法に基づく研究デザインと統計学によるデータ解析処理が重要視されるようになりました。 その結果、現在ではこのような記載方法の論文は科学雑誌に受理されなくなりました。 そして日本では、1967年(昭和42年)以後はこのような資料では医薬品は許可されなくなりました。 厚労省の「医薬品の製造承認等に関する基本方針について」を見ると、それに関連した医薬品許可基準の変遷がわかると思います。
大阪はびきの医療センターの研究者の方は、これが50年以上前の発表形式であることを十分に御存知のはずです。 事実、最初の研究成果公表案は「第1回開示請求 ポビドンヨードうがい会見資料」中の「⑥20200907190927.pdf」の54ページに載っている次のようなものだったようです。
この公表案と、実際に公表された「ポビドンヨード含嗽の観察研究(SARS-CoV2 感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたポビドンヨード含嗽の非盲検ランダム化臨床研究)」を比較すると次のような相違点があります。
この公表案は例数が記載されていないことを除けば、検証研究の前段階として実施した探索研究の結果の発表内容として、実際の公表内容ほど大きな問題点はありません。 そこで何故実際に公表されたような内容に変更したのか、手に入れた資料からその原因を探ることにしました。