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重回帰分析の結果を解釈する時、図7.4.1のようなパス図(path diagram)を描くと便利です。
パス図では四角形で囲まれたものは変数を表し、変数と変数を結ぶ単方向の矢印「→」は原因と結果という因果関係があることを表し、双方向の矢印「←→」はお互いに影響を及ぼし合っている相関関係を表します。
そして矢印の近くに書かれた数字をパス係数といい、因果関係の場合は標準偏回帰係数を、相関関係の場合は相関係数を記載します。
回帰誤差は四角形で囲まず、目的変数と単方向の矢印で結びます。
そして回帰誤差のパス係数として残差寄与率の平方根つまりを記載します。
図7.4.1は第2節で計算した重回帰分析結果をパス図で表現したものです。 このパス図から重症度の大部分はTCとTGに基づいて評価していて、その際、TGよりもTCの方をより重要と考えていること、そしてTCとTGの間には強い相関関係があることがわかります。
パス図は次のようなルールに従って描きます。
表6.1.1のデータに年齢を付け加えたものが表7.4.1のようになったとします。 この場合、年齢がTCとTGに影響し、さらにTCとTGを通して間接的に重症度に影響することは大いに考えられます。 つまり年齢がTCとTGの原因であり、さらにTCとTGが重症度の原因であるという2段階の因果関係があることになります。 このような場合は図7.4.2のようなパス図を描くことができます。
患者No. | 年齢 | TC | TG | 重症度 |
---|---|---|---|---|
1 | 50 | 220 | 110 | 0 |
2 | 45 | 230 | 150 | 1 |
3 | 48 | 240 | 150 | 2 |
4 | 41 | 240 | 250 | 1 |
5 | 50 | 250 | 200 | 3 |
6 | 42 | 260 | 150 | 3 |
7 | 54 | 260 | 250 | 2 |
8 | 51 | 260 | 290 | 1 |
9 | 60 | 270 | 250 | 4 |
10 | 47 | 280 | 290 | 4 |
図7.4.2のパス係数は次のようにして求めます。 まず最初に年齢を説明変数にしTCを目的変数にした単回帰分析と、年齢を説明変数にしTGを目的変数にした単回帰分析を行います。 そしてその標準偏回帰係数を年齢とTC、年齢とTGのパス係数にします。 ちなみに単回帰分析の標準偏回帰係数は単相関係数と一致するので、この場合のパス係数は標準偏回帰係数であると同時に相関係数でもあります。
次にTCとTGを説明変数にし、重症度を目的変数にした重回帰分析を行います。 これは第2節で計算した重回帰分析であり、パス係数は図7.4.1と同じになります。 表7.4.1のデータについてこれらの計算を行うと次のような結果になります。
このように、因果関係の組み合わせに応じて重回帰分析(または単回帰分析)をいくつかの段階に分けて適用する手法を階層的重回帰分析(hierarchical multiple regression analysis)といいます。 因果関係が図7.4.2のような複雑なものになる時は階層的重回帰分析を行う必要があります。
階層的重回帰分析とパス図を利用して、複雑な因果関係を解明しようとする手法をパス解析(path analysis)といいます。 パス解析ではパス図を利用して次のような効果を計算します。
以上のパス解析から次のようなことがわかります。
ここで注意しなければならないことは、図7.4.2は表7.4.1のデータを解釈するモデルのひとつであり、他のモデルを組み立てることもできるということです。 例えば年齢と重症度の間にTCとTGを経由しない直接的な因果関係を想定すれば図7.4.2とは異なったパス図を描くことになり、階層的重回帰分析の内容も異なったものになります。 どのようなモデルが最適かを決めるためには、モデルにどの程度の科学的な妥当性があり、パス解析の結果がどの程度科学的に解釈できるかをじっくりと検討する必要があります。
重回帰分析だけでなく判別分析や因子分析とパス解析を組み合わせ、潜在因子も含めた複雑な因果関係を総合的に分析する手法を共分散構造分析(CSA:Covariance Structure Analysis)あるいは構造方程式モデリング(SEM:Structural Equation Modeling)といいます。 これらの手法はモデルの組み立てに恣意性が高いので、主として社会学や心理学分野で用いられます。