以前、TV(テレ朝ローカルの深夜番組)で議論してたんですが、「月には大気が無いと言われているが、アポロの月面着陸の時に宇宙飛行士が月面に立てた星条旗がパタパタと風になびいていた。 大気が無ければ風は吹かないはずだから、あれこそまさに月に大気のある証拠だ!」と、UFO・宇宙人肯定派が主張してました。 本当のところはどうなんでしょう?
僕も月面の星条旗がなびいているシーンを見たことがありますよ。 そのシーンは、アポロ計画を記録した市販のドキュメンタリー・ビデオにも収録されています。 あの星条旗の上端にはワイヤーが入れてあり、真空中でダラリと垂れないようにしてあったのですが、問題のシーンでは、それを宇宙飛行士が月面に突き刺しているため、その振動が旗に伝わって、パタパタと風になびいているように見えたというのが真相です。 アポロの「星条旗パタパタ疑惑 (^^;)」は、ウィリアム・ブライアントという人が「ムーンゲート」という著書の中で指摘したのが最初で、テレ朝ローカルの深夜番組もその本を元ネタにしたのではないかと思います。
月に大気が無いことは、望遠鏡で三日月の端を観察すれば簡単にわかることですが(もし大気があれば、スペースシャトルから地球を見た時のように、三日月の端にぼんやりと大気の層が見えるはずです)、そういった直接的な観察よりも、不確かで一面的なTV映像の方を信用するというのは、いかにも現代という時代を反映しているような気がします。
月面の風ではないですが、宇宙の「風」をテーマにしたSFってありませんでしたっけ? 確か、「太陽風」(うろ覚え(^^;;)とか何とか……。
「太陽風」とは太陽から放射される超音速のプラズマ(陽イオンと陰イオンが電離した状態の気体)流のことで、1958年にパーカーによって理論的に予言され、1962年に宇宙空間探測機マリナー2号によって実際に発見されたものです。 この太陽風をテーマとしたSFとしては、アーサー・C・クラークの「太陽からの風」(短編集『太陽からの風』に収録、早川書房)と、堀晃の「太陽風交点」(短編集『太陽風交点』に収録、早川書房、徳間文庫)が有名です。 クラークのネビュラ賞受賞作「太陽からの風」は、太陽風を利用した雄大な宇宙ヨットレースの話で、僕のお気に入りの短編のひとつです。(^_^)v 「太陽風交点」は「太陽からの風」の影響を受けて書かれたもので、こちらも第1回SF大賞を受賞した傑作です。
ちなみにNHKのアニメ「キャプテン・フューチャー」シリーズのひとつに、「太陽からの風」をパクッた話がありました。 これはアニメ用のオリジナル脚本で、原作の「キャプテン・フューチャー」(エドモンド・ハミルトン、早川書房)にはそんな話はありません。 TVドラマやアニメの脚本家は、ネタに困るとこういう古典作品(特に短編)からのパクリをよくやるんですよね。(~.~)
またまた珍説ばかり集めた本からのネタですが、地球の内部は空洞であり、北極と南極に大きい穴が開いていて、そこから内部に入ることができる、そしてそこにはムー大陸の生き残りの人達が、高度な文明を築いており、UFOは実はそこからやってくる、という説がありました。
この説の証拠として、気象衛星が撮影した北半球の写真が載っていて、その写真には、確かに北極点を中心とした巨大な黒い穴が写っていました。
北極には、本当にこんな大穴が開いているのでしょうか?
この写真は1967年11月23日に気象衛星エッサ7号が撮影した有名な写真で、僕も見たことがありますよ。 マンガ家の星野之宣も、「巨人達の伝説」(集英社)という作品中でネタとして使っています。 この写真を見ますと確かに北極点に大穴が開いているように見えますが、北極にこんな大きな穴があったとしたら、上村直己さんを始めとする北極探検者達はみんな落ちてしまっただろうという常識論はさておくとして、よく考えると何か変だと思いませんか? ある時刻に地球を北極の真上から撮影したとしますと、地球のほぼ半分は昼であり、残りの半分は夜ですから、当然、昼の部分は明るく写り、夜の部分は黒く写るはずです。 ところがこの写真には、北半球全体が明るく写っていて夜の部分がありません。
つまりこの写真はある時刻に北半球を1枚で写したものではなく、時間をずらして地球の昼の部分を何枚も写し、それらの写真を合成したものなのです。 事実、この写真をよく見ますと、小さな写真を何枚もつなぎ合わせた跡があることに気が付くと思います。 なぜそのようなことをするのかと言いますと、気象衛星は地球全体の気象の様子を把握するためのものですから、北半球全体が明るく写った写真の方が都合がよいからです。 また現実問題として、気象衛星は北半球全体を1枚の写真に入れられるほど高いところを飛行しているわけではありませんので、何枚もの写真を合成しない限り、このような写真を撮影することは不可能です。 このことと、写真の撮影日が11月23日であるということから、例の大穴の正体が推理できると思います。 そう、この黒い穴は、冬になると1日中太陽に照らされない北極圏の夜の部分なのです。
地球空洞説というのは、17世紀にハレー彗星で有名な天文学者のエドモンド・ハレーが唱えた科学的仮説を、19世紀にアメリカのジョン・クリーヴズ・シムズという人が、センセーショナルな空想的俗説に膨らませたものです。 その後の地球物理学の進歩により、地球空洞説は否定されましたが、例によって巷では似非科学的珍説として生き残りました。 ですからひょっとしたら、地球空洞説のことを知っていたNASAの関係者が、冗談で何の説明も加えずにこの写真をマスコミに流したのかもしれません。 気象衛星写真の撮影上のテクニックを知らない一般人が、この写真を見た時のインパクトはけっこう大きいでしょうし、よく考えれば誰にでもトリックのネタがわかるはずですから、なかなか効果的な冗談になりますもんね。(^^;)