玄関小説とエッセイの部屋エッセイコーナーお宮さん騒動顛末記

【第6章 顛末】

S団地の説得工作が成功すると、すぐに解決法1のために土地交換に関する要望書を神社の代表役員名で町役場に提出し、応急処置2-1のために、境内にある町有地の利用法に関する念書を区長、文化財保存会会長、神社代表役員の連名で町役場に提出し、さらにS団地近辺にある町有公園の遊具の整備・増設に関する申請書を区長名で町役場に提出しました。 そしてお宮さん騒動勃発時に神社の簡易測量を依頼した事務所に、神社近辺の正確な測量と、土地交換に伴う土地の登記作業を依頼しました。

またS団地近辺にある町有公園の遊具の整備と増設が行われた後、参道の両側の公園の遊具を業者に依頼して撤去してもらいました。 さらに応急措置2-2のために、総会で承認を受けた後、参道の両側の神社の所有地を借用するための賃貸契約を区長と神社代表役員の間で締結しました。

S団地の説得工作に比べれば、これらの作業は他愛がないほど簡単でした。

これらの作業を済ませた僕は、1、2年たてば土地交換の手続きが終了し、お宮さん騒動は無事に解決するだろうと楽観していました。 まさかその手続きが終了するまでに10年近くかかってしまうとは、この時は思ってもみませんでした。

お宮さん騒動解決のための作業を終了してから2年ほどして、諸般の事情から会社を退職してフリーランスになるために名古屋に引っ越すことにしました。 その時にはまだ土地交換の手続きが終了していなかったので、お宮さん騒動の経緯と今後行うべき事を資料にまとめ、氏子総代さんに渡して後を託しました。 後を託したといっても、単に測量と登記を依頼した事務所からの連絡を待つだけであり、特に作業が必要というわけではありません。 そのためこの時も僕は楽観していて、お宮さん騒動が解決するのにそれほど時間はかからないだろうと思っていました。

ところがその後、氏子総代さんからは一向に音沙汰がなく、いつの間にか数年間が過ぎてしまいました。 そしてほとんど忘れかけていた頃、氏子総代さんから「土地交換の手続きが終了し、お宮さん騒動が無事に解決した」という連絡を貰いました。 僕が解決のための作業を終了してから、何と10年近くかかったことになります。 ほとんど忘れかけていただけに、この連絡を貰った時はさすがに感慨深いものがありました。

こうして、お宮さん騒動は発端から15年ほどかかって無事に解決しました。 お宮さん騒動の原因解明のための調査は半分以上は趣味でやったので、当時もけっこう楽しんでいましたし、こうしてお宮さん騒動が無事に解決した今では、さらに楽しい思い出になりました。

人は老人になると思い出話ばかりしたがり、周囲の人に迷惑がられたりします。 でもアルツ君とハイマーちゃんのせいで、老人の思い出話には実際の出来事と異なることが多々あり、しかもあまりおおっぴらにできない話となると、さらに老人の妄想が入り込み、実際の出来事とはかけ離れた話になりがちです。 このお宮さん騒動顛末記にもその危険性が大いにありますから、”使用上の注意をよく読み、誤用を避け、用法用量を守り、副作用に注意して”、眉に唾を付けまくり、神罰を受ける覚悟で読んでいただけたのなら本望です。

妄想老人の思い出話に辛抱強くお付き合いいただき、どうもありがとうございました。m(..)m