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1054. Re[1053]:東北関東大震災の関連サイト 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/19(土) 12:39:33
危機的状況の中の希望
村上龍のニューヨーク・タイムズへの寄稿文

私が10年前に書いた小説には、中学生が国会でスピーチする場面がある。「この国には何でもある。本当にいろいろなものがあります。だが、希望だけがない」と。
今は逆のことが起きている。避難所では食料、水、薬品不足が深刻化している。東京も物や電力が不足している。生活そのものが脅かされており、政府や電力会社は対応が遅れている。
だが、全てを失った日本が得たものは、希望だ。大地震と津波は、私たちの仲間と資源を根こそぎ奪っていった。だが、富に心を奪われていた我々のなかに希望の種を植え付けた。だから私は信じていく。


1053. 東北関東大震災の関連サイト 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/19(土) 00:23:56
 参考までに、東北関東大震災に関連したサイトを紹介しておきましょう。

 最初の2つ以外は、防災関係のメーリングリストで紹介されたサイトです。そのMLは、以前、海部郡で地元の区長をやっていた時からメンバーになっているもので、少なくともマスコミよりは信頼性の高い情報が得られます。(^_-)

・日本赤十字社 東北関東大震災義援金を受け付けます

  http://www.jrc.or.jp/contribution/l3/Vcms3_00002069.html

・日本ユニセフ協会 東日本大震災緊急募金

  http://www.unicef.or.jp/kinkyu/japan/2011.htm

・東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)関連情報

  http://bunanomori.com/touhoku.shtml

・みんなでつくる震災被災者支援情報サイト

  https://sites.google.com/site/minnadewiki/home

・レスキューストックヤード

  http://www.rsy-nagoya.com/rsy/

・災害看護 命を守る知識と技術の情報館

  http://www.coe-cnas.jp/index.html

※このサイトは、現在サーバーが不安定なため接続できないことがあります。次のサイトに同じ情報を一部掲載しているので、接続できない時はこちらにアクセスしてください。

・ドイタカヨシの土井孝純(ドイタカヨシ)のドイブロの記事

  http://ameblo.jp/takadoi/

                            とものり

1052. 東北地方太平洋沖地震−その3 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/18(金) 00:12:48
 連日報道される被災地の惨状を見ていると、平穏無事にぬくぬくと暮らしているのが申し訳なく思われ、被災地のために何かしなければ……という思いにかられて、あせったような気持ちになります。

 でも冷静に考えれば、我々普通の庶民にできることは、残念ながら非常に限られていることがわかります。

 レスキュー隊員や医師や看護師のように特殊技能を持っていれば、被災地や避難所で救援活動をすることができます。災害援助関連のNPOやNGOの関係者であれば、救援活動の後方支援をすることができます。

 知名度の高いアーティストやアスリートのように社会的影響力があれば、被災者に向けて励ましのメッセージを送ったり、義援金への協力を呼びかけたり、チャリティコンサートやチャリティマッチを開催したりできます。

 しかし我々普通の庶民は、できる範囲で義援金に協力し、もし被災者の中に友人や知人がいれば励ましのメッセージを送り、事態を冷静に見守って、自分が被災者になった時のために教訓を読み取るといったことしかできません。何とも歯がゆい限りで、自分の無力さを嘆きたくなります。

 しかし我々普通の庶民には”圧倒的多数”という強みがあります。たとえひとりひとりができることはわずかでも、それが膨大な数になれば大きな力になります。

 義援金の額にせよ、励ましのメッセージの量にせよ、数が多ければ非常に大きなものになります。またひとりひとりが今回の災害から教訓を読み取り、それを次の災害時に役立てることができれば、長い目で見て災害を抑える大きな効果があるはずです。

 逆に我々庶民が慌てて付和雷同すれば、デマや流言飛語が横行し、集団パニックや集団ヒステリーを引き起こし、救援物資の欠乏や便乗値上げを招き、救援活動を妨げ、被災地の困窮を益々増大させてしまうでしょう。

 尊敬するJICA(国際協力機構)理事長の緒方貞子氏の有名な言葉に、「心は熱く(情熱を持って)、頭は冷たく(冷静に)」というものがあります。

 こんな時こそ心は熱く、頭は冷たくして、マスコミの感情的な報道に煽られていたずらに付和雷同することなく、事態を冷静に見守り、自分にできることを見極め、するべきこと——例えば義援金への協力等——をし、するべきではないこと——例えば不必要な買いだめや不確かなチェーンメールの転送等——はしないように心がけたいものです。

                            とものり

1051. 福島原子力発電所事故に思う 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/17(木) 21:34:46
 今回の福島原発事故では、原子力発電所が継子いじめを受け、やり場のない怒りのはけ口にされていて、少し気の毒に思う時があります。(^^;)

 人為的なミスが原因の人災であるチェルノブイリの原発事故や、スリーマイル島の原発事故などと違って、今回の原発事故は想定外の規模の地震と津波による自然災害です。

 もちろん、想定が甘かったということについては批判されるべきであり、今後の教訓にしなければならないでしょう。しかし想定外の災害に対しても何とか全面的な破壊は免れ、修復作業で怪我をした作業員は別として、これまでのところかろうじて被害者を出さずに頑張っています。

 それに対して火力発電所などは今回の地震と津波で破壊され、石油を流出して火災を起こし、周囲の住民を巻き添えにして大勢の被害者を出しています。

 多くの被害者を出した火力発電所が全く問題にされず、何とか被害者を出さずにいる原子力発電所が、世間から目の敵にされて袋叩きにあっているのは少々気の毒です。これは日本人の心情的な原子力アレルギーによる継子いじめと、原子力発電所の安全性ばかりを宣伝してきた電力会社に対するしっぺ返しのような気がします。

 医薬分野では、ある患者に対してある薬剤を使うべきかどうかを検討する時、その薬剤の有効性と安全性つまり効果と副作用を正確に把握する必要があります。そのため効果ばかりを強調し、副作用情報を隠すような宣伝をすると、副作用が発現した時の被害が大きくなり、製薬会社は世間から手痛いしっぺ返しを受けます。

 原子力発電所についても、現在の日本に必要かどうかを検討するためには、効果つまり有効性ばかりを強調せず、副作用つまり危険性についても正確に把握して情報公開する必要があります。

 ただ、発現頻度が非常に低い副作用の内容を正確に把握するのが難しいように、今回のように千年に一度くらいの頻度で発生する規模の地震が原発に与える影響と、それによる危険性を正確に予測するのは困難でしょう。

 そういった同情の余地が多少はあるものの、常に予測不能な危険性が存在する可能性があるということも含めて、原発の有効性と危険性を正確に情報公開する必要があると思います。

 今回の福島原発事故に限らず、原発事故が日本の社会に与える影響は、実際の健康被害よりも、唯一の被曝国民である日本人の心情的な原子力アレルギーによる、集団パニック的な社会不安の方がよっぽど大きいと思います。

 その意味でも、原子力発電所の関係者が正確な情報を積極的に公開することと、それをマスコミが正確かつ冷静に伝え、正しい情報が世間に普及するように努めることが大切でしょう。

 もし今回の地震と津波で、火力発電所と同じように原子力発電所が破壊されていたとしたら、ひょっとすると現在のような継子いじめかつ袋叩き状態にはなっていないかもしれません。しかしその時には、非常に多くの被害者が出る大惨事になっていたでしょう。

 そういったことを思えば、東京電力の関係者の方は、原子力発電所に対する継子いじめと、やり場のない怒りのはけ口となるための人身御供に甘んじていただき、幸いにも被害者にならずにすんだ多くの人達のことを想像して、自らを慰めていただきたいところです。(^^;)

                            とものり

1050. Re[1049]:東北関東大震災に思う 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/17(木) 17:17:09
>NEGIさん

>>ただ、マスコミの報道で少し気になるのは、放射線と放射性物質をご
>>ちゃ混ぜにしているような気がする事です。

 いつものことですが、マスコミ報道では放射線と放射能または放射性物質を混同してますねぇ。(^^;)

 「放射性物質」は放射線を放出する能力を持つ物質のことで、測定単位はグラム(g)です。「放射能」は本来は放射線を放出する能力のことで、測定単位はベクレル(Bq)です。しかし、いつの間にか放射性物質そのもののことも「放射能」と呼ぶようになったため、「放射能を浴びる」などという言い方をすることがあります。

 「放射線」はX線やγ線のように波長が非常に短い電磁波と、α線(ヘリウムの原子核)やβ線(電子)のように高速で動く粒子のことで、測定単位は電子ボルト(eV)、クーロン毎キログラム(C/kg)、グレイ(Gy)、シーベルト(Sv)などがあります。この中でマスコミでよく用いられるのは、放射線が人体に与える影響を表す実効線量(等価線量)の単位シーベルトでしょうね。

>>たしかに放射線被曝の点では同じかもしれませんが、
>>原発では放射性物質が大気中に出ているのです。
>>内部被曝やら、後々の生物濃縮やらが心配になってくるところです。

 僕はマスコミ報道をほとんど信じていませんが(^^;)、現在、報道されているところでは、福島原発の周囲でヨウ素131とセシウム137あたりが検出されているらしいですね。これらの放射性物質は気体の状態か水蒸気に溶けた状態で飛散するので、原発事故ではたいてい検出されています。

 今回、福島原発で測定された放射線の実効線量は、最大値(瞬間最大風速と同じようなもの)で0.3mSv/hr程度(基準値は100mSv/year)であり、福島原発の周囲で検出された放射性物質の放射能は、最大値で100Bq/kg程度(基準値は300Bq/kg)だそうですから、確かに微々たるものです。

 放射性物質が体に付着したり、体内に入ったりすると、当然、放射線を浴びます。しかしその量が少なければ大したことはありませんし、放射性物質を継続的に体内に取り込まない限り、生物濃縮は起こりません。現在、報道されている数値が正確ならば、全く問題はない量でしょうね。

 こういった放射線に関する正確な情報は、次のサイトを見てください。僕の不確かなレスを読むよりも、何十倍も正確な情報がわかりますよ。(^_-)

・放射線医学総合研究所

  http://www.nirs.go.jp/index.shtml

                            とものり

1049. 東北関東大震災に思う 投稿者:NEGI 投稿日:2011/03/17(木) 09:05:12
 東北関東大震災はえらいことになっていますな。
 亡くなられた方被災された方にはお慰めする言葉もありません。
 海外では、どうして日本では略奪が起こらないのか、あんな目にあっ
てどうして日本人が整然と行動してるのか不思議がっているようですが、
何千年も地震やら津波やら噴火やら台風やらに悩まされていれば、お互
いの助け合いこそが生き残る術であり、周囲に嫌われる行動をとれば結
局自分に返ってくるからでしょう。
きっとその事が我々のDNAに刷り込まれているのでしょう。
 そんな環境が、自然を畏れ祖先を敬う神道の発生の理由の一つなので
しょうね。
 原発も大変な事になっているようで、私なんぞが心配しても何の役に
も立ちませんが、東電やらTVに登場する専門家の楽観的な予想を悉く覆
すような自体の進行で、もはや最悪の結末までも想定しなくてはいけな
くなっているようです。
 ただ、マスコミの報道で少し気になるのは、放射線と放射性物質をご
ちゃ混ぜにしているような気がする事です。
 いわく、これこれの値はレントゲン一回分より少ないとか、ニューヨ
ークまでのフライトで浴びる数値と同じだとかの論調です。
 たしかに放射線被曝の点では同じかもしれませんが、原発では放射性
物質が大気中に出ているのです。
 内部被曝やら、後々の生物濃縮やらが心配になってくるところです。
 以上NEGIが勝手に考えた事で、間違っているかもしれません、専
門家のご意見を待ちます。
  お亡くなりになられた方達に慎んで哀悼の意を表します NEGI

1048. 東北地方太平洋沖地震−その2 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/16(水) 09:53:55
 東北地方太平洋沖地震が引き起こした東北関東大震災(NHKの表現)または東日本大震災(民放各社の表現)の実態が徐々にわかるにつれて、仙台の知人達のことが心配になりました。

 以前、仕事で仙台に何度も出張し、知人が何人もできました。仕事関係の知人ですからプライベートな連絡先は知らない上に、現在は仕事上の付き合いはないので、今のところ連絡を取るのは遠慮しています。

 その人達はほとんどが大学または病院に務める研究者であり、職場の異動がかなり頻繁なため、知り合った頃の職場にそのままいるとは限りません。それでも知り合った頃の大学と病院が一応は無事で、地震の後も活動を続けていることを確認すると、何となく少しほっとしました。

 仕事の関係で各地にこういった知人がけっこういて、その人脈のお陰で今の仕事が成り立っています。そのため離れた土地で起きた災害でも、人ごととは思えません。

 でも仕事上の付き合いですから、プライベートな連絡をするのははばかれ、何となく心配だけしていて、災害がおさまった後で以前のように仕事の依頼があったりすると、ようやくほっとして安心したりします。

 個人で仕事をしていると、会社で仕事をしていた時と違って、仕事上の付き合いと個人的な付き合いの区別が曖昧になり、ついつい料金を貰うのを忘れてカミさんに怒られたりします。(^^;)ゞ

                            とものり

1047. 日本人の防災意識 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/15(火) 10:07:46
>山本直樹先生

>>人の偉さは、年齢や地位ではなく、苦難に直面した時にどのような立ち居振る舞いができるかだ、と気づかせてくれた。

 今回の大震災における被災者の冷静でモラルある態度に、世界中の人達が驚嘆している
というニュースが海外から伝えられていますね。

 我々日本人にとって災害時の行動として当たり前のことが、海外の人達には驚くべきこ
とのように思えるようです。

 よく一部のマスコミや好戦的な人達が、「日本人は戦争を知らない平和ボケだ」と揶揄
しますよね。

 でも今回のような大災害における日本人の態度を見ると、日本人は平和ボケどころか、
世界でも稀なほど危機管理意識と防災意識を持った民族だということがわかります。

 確かに、日本人は人間相手の戦いは長い間経験していません。しかし、自然相手の戦
いは不断に行っています。

 毎年毎年、台風や大雨や大雪と何度も戦い、数年に一度は大地震や津波と戦い、その
たびに、受けた被害を教訓にして危機管理意識を高め、防災意識を高めています。

 そして人間相手の戦いでは力の強い者が生き残りますが、自然相手の戦いでは助け合
った人達が生き残るということを、みんなが経験からよくわかっています。

 そういった経験から、災害時における冷静でモラルある態度と、助け合いの精神が培
われたのではないかと思います。

 日本では幼稚園や小学校の頃から地震発生時の対応を教育し、定期的に避難訓練をし
ていますよね。

 これは戦時下における避難訓練と同じようなもので、平時から子供にこんな訓練をし
て、危機管理意識と防災意識を高めようと努力している国は世界でも希でしょう。

 そういう意味では、日本は、常時、自然を相手にした戦時下にあり、平和ボケどころ
ではないと思います。

 人間相手の戦いしか知らず、自然相手の戦いをあまり経験したことのない人達には、
こういった日本人の危機管理意識と防災意識が驚異に見えるのだと思います。

                        とものり

1046. また再建しましょう 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/15(火) 07:55:28
朝このサイトを見て涙が出そうになりました。
ある人のコメントです。
人の偉さは、年齢や地位ではなく、苦難に直面した時にどのような­立ち居振る舞いができるかだ、と気づかせてくれた。このおじいち­ゃんの二言三言だけで、この方の潔さに感動し、勇気が貰えた。

1045. Re[1044]:[1043]:東北地方太平洋沖地震 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/14(月) 18:42:42
>山本直樹先生

>>ため口で同じ質問を繰り返し聞いていて気分が悪くなりました。
>>この程度の人がマスコミを動かしているんでしょうね。

 まあ、何といってもマスコミ人種ですからねぇ…。(^^;)

 こういった記者会見の場合、僕は発表だけ聞いたら、その後の質疑応答は聞かない
ことにしています。発表の内容を詳しく知りたい時は、インターネットで公式サイト
を見ればたいていわかりますからね。

 それから今回の地震で、以前、紹介していただいた「百姓たちの江戸時代」(渡辺
尚志著、ちくまプリマー新書)の一節を思い出しましたよ。

 今回のような大災害でほとんど壊滅してしまった村を、その周囲の村の人達が力を
合わせて助け、村を再生したエピソードです。

 被害を受けた村で生き残った人達を物心両面で支えると同時に、身分の上下にかか
わらず、親を失った子供と、子供を失った親を養子縁組で親子にし、妻を失った男性
と、夫を失った女性を見合わせて夫婦にするといった努力を続け、根気良く村を再生
させたという、実に印象的なエピソードでした。

 視覚障害の娘のために、理不尽な差別と戦った父親のエピソードとともに、このエ
ピソードには非常に感動しました。

 今回のような災害があるたびに、日本の民衆にはこういった助け合いの精神が今で
も脈々と生きていることを実感します。

                        とものり

1044. Re[1043]:東北地方太平洋沖地震 投稿者:山本直樹 投稿日:2011/03/14(月) 17:57:58
東京電力の会見場での記者。

ため口で同じ質問を繰り返し聞いていて気分が悪くなりました。
この程度の人がマスコミを動かしているんでしょうね。
なんだか、尼崎の脱線事故での ”人が死んでんねんで!”を思い出しましたが
あれはもうやむやで終わった気がします。
http://www.youtube.com/watch?v=PThbB-sodWA&feature=player_embedded
まあ、いつも偉そうに言っているんですから、この際、テレビなんかは、
どうせ似たような馬鹿げた放送を繰り返すだけですから、輪番で放送中止にすれば
いいし、くだらない新聞や雑誌は、たとえば、新聞は朝刊だけにするとか、週刊誌は
月刊にするとか、一時中止するとかすべきでしょう。 どうせ、知る権利とか、伝える
義務があるとぬかして、垂れ流しし続けるでしょうねえ。

1043. 東北地方太平洋沖地震 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/14(月) 10:33:04
 3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震のあまりの酷さに、被災地でもないのに、ここ数日間は呆然としている感じです。

 名古屋の震度は3〜4程度で大したことはなかったのですが、事務所兼住居が30階建て高層マンションの18階のせいか、マンション全体が船のようにゆっくりと大きく揺れ、ほとんど船酔い状態でした。(^^;)

 すぐにTVをつけたところ、東北地方を震源とする非常に大きな地震とわかりました。驚いて、揺れおさまった後ですぐに家族と連絡を取ろうとしましたが、思ったとおり携帯電話はつながりません。

 そこで家族に携帯メールを出して、携帯メールか家のIP電話に連絡をするように連絡しました。こういう時には、携帯メールとインターネットが比較的つながりやすいからです。

 カミさんからは、すぐにIP電話に連絡がありました。携帯電話がつながらないので、会社の固定電話からかけたそうです。

 その後、1時間ほどして東京の上の娘からやはりIP電話に連絡がありました。娘も職場の固定電話からかけてきました。

 それからさらに1時間ほどして、三重県の下の娘から携帯電話に連絡がありました。その頃には、三重県とは携帯電話がつながるようになっていたのです。能天気なことに、下の娘は二人の子供と一緒に昼寝をしていて、地震があったことは全く知らなかったそうです。(^^;)

 災害時には携帯メールとインターネットが有効ということは、知識としては知っていましたが、今回の地震でそれを確かに実感しました。

                            とものり

1042. ゲノム四方山話−プロテインワールド 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/07(月) 11:41:58
 RNAワールド仮説に対して、「初期の生命は蛋白質を基礎としており、後に蛋白質が持つ情報がRNAとDNAに伝えられた」という”プロテインワールド仮説”も提唱されています。

 分子生物学が発展する前は、1922年にオパーリンが提唱した”化学進化説”が有力でした。この説は「無機物からアミノ酸等の有機物が作られ、それが重合して蛋白質等の高分子有機物が作られ、それが高分子集合体であるアメーバー状のコアセルベートになり、コアセルベートが有機物を取り込んで代謝するようになり、それが生命になった」という説です。

 プロテインワールド仮説は、この化学進化説を分子生物学的に再構成したような説と言えるでしょう。

 しかし現在は、どちらかと言えばRNAワールド仮説の方が主流です。遺伝子の正体が不明だった時代には、遺伝子はある種の蛋白質であるという説が有力であり、DNAやRNAのような単純な構造の物質が遺伝子であるはずがないと思われていました。しかしDNAとRNAが遺伝情報の担い手であることが判明し、単純な構造の物質が非常に複雑な情報を処理し、しかも自己複製能力を持つことがわかると、今度は生命そのものの起源もDNAやRNAにあるのではないかと考えられるようになったのです。

 仕事でお付き合いしていたゲノム研究者のひとりがRNAワールド仮説の熱心な支持者で、RNAワールド仮説の正当性を僕に力説してくれました。お陰で、どちらかと言えばプロテインワールド仮説の方を有力視していた僕は、RNAワールド仮説も有力視するようになり、現在はどちらの仮説に対しても半信者の状態です。(^^;)

 手塚治虫の名作「火の鳥・未来編」では、この作品を発表した時に有力だった化学進化説に基づいてストーリーが展開していき、「火の鳥・黎明編」では、やはり発表当時に話題だった江上波夫の”騎馬民族征服王朝説”に基づいてストーリーが展開していきます。

 しかし現在ではどちらの説もすでに過去の説となリ、それを修正した新しい説が主流になっています。もし手塚先生が現在でも生きておられたら、作品を単行本にするたびに、その時の社会情勢に合わせて内容を手直しされる手塚先生のことですから、どちらの作品も現在主流の説に基づいて内容を手直しされることでしょう。(^_-)

                            とものり

1041. ゲノム四方山話−RNAワールド 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/04(金) 16:47:24
 リボザイムとレトロウイルスでは脇役のはずのRNAがDNAや蛋白質を司っていて、これはセントラル・ドグマに反した存在です。

 さらに分子生物学の進歩により、遺伝におけるRNAの役割は非常に多彩であり、脇役というよりも主役級のものであることがわかってきました。それに比べると、DNAの方がむしろ脇役的な役割しか果たしていないような感じすらします。

 これらの事実から、セントラル・ドグマは絶対的なものではなく、部分的に修正した色々なドグマを検討する必要があると考えられるようになりました。

 そしてその考えを推し進めたものとして、「初期の生命はRNAを基礎としており、後にRNAよりも安定性が高いDNAを遺伝情報の記憶物質として利用するようになった」という”RNAワールド仮説”が提唱されています。

 アクが強くて存在感のある脇役が主役を食ってしまうことはよくあることで、イヤミやチビ太を始めとする赤塚不二夫の多くのキャラがそうですし、フランス映画「さらば友よ」で主役のアラン・ドロンを食ってしまい、後に「う〜ん、マンダム!」と言って”男の世界”を築いたチャールズ・ブロンソンなどは、まさにRNAを連想させる存在です。(^^;)

 彼はリトアニア(杉原千畝の”命のビザ”で有名な北欧の国)系アメリカ人で、最初は本名のチャールズ・デニス・ブチンスキー(Charles Dennis Buchinsky)をそのまま芸名にしていましたが、赤狩り旋風でハリウッドが狂乱していた時に、パラマウント・スタジオのシンボル的存在である「ブロンソン・ゲート」にちなんでチャールズ・ブロンソンに改名したそうです。

 以前、仕事でロサンゼルスに行き、ブロンソン・ゲートの近くを通った時、そんなエピソードを思い出してちょっと感慨深かったりしました。(^_-)

                            とものり

1040. ゲノム四方山話−レトロウイルス 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/02(水) 11:01:24
 セントラル・ドグマではDNAが遺伝情報の主役であり、蛋白質が生命活動の主役、そしてRNAはDNAと蛋白質の間を取り持つ脇役という位置づけです。

 ところが1980年代に、RNAの中に触媒作用を持つものが発見され、リボザイム(ribozyme、RNAとEnzymeから作った造語)と名付けられました。リボザイムは触媒作用によって自分自身を切り貼りする能力——自己スプライシング機能——を持っていて、DNAから転写した遺伝情報を勝手に編集し、多様な蛋白質を作ることができます。

 またヒト免疫不全ウイルス(HIV、エイズウイルス)のようなレトロウイルス類は、RNAを鋳型にしてDNAを合成する逆転写酵素を持っていて、自身のRNAからDNAを合成し、それを宿主細胞のDNAに組み込むことができます。そして宿主細胞に組み込まれたDNAはプロウイルスと呼ばれる状態になり、ウイルスをどんどん複製することになります。

 実は、ヒトのDNAの中には大昔に感染したウイルスの遺伝子と思われるものがあり、「ウイルス化石」と呼ばれています。そしてヒトに限らず多くの生物は、感染したウイルスの遺伝子をゲノムに組み込むことでゲノムの多様性を広げ、ウイルスと相互に関連し合って進化してきたと考えられています。

 ミトコンドリアは、大昔に細胞内で共生するようになった真正細菌と考えられていますが、ウイルス化石は、いわば大昔にDNA内で共生するようになったウイルスといえるかもしれません。

 そして大昔にヒトの脳内で共生するようになったアミガサダケのお陰で、ヒトは高度な知能を持つようになった……というストーリーの傑作SF小説が、ブライアン・W・オールディスの「地球の長い午後」です。

 「パラサイト・イブ」といい、「地球の長い午後」といい、生物の寄生や共生という現象はSFのセンス・オブ・ワンダー心を刺激するようです。(^_-)

                            とものり

1039. 電子申告よる確定申告 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/28(月) 23:37:26
 本日(2月28日)、開業後3回目の確定申告を行いました。(^o^)/

 昨年、申告会場でやたらと待たされたことと、税務署の職員の対応のひどさに懲りたので、今年はe-Taxを利用して電子申告をすることにしました。

 電子申告をするためには、区役所で住民基本台帳カードと電子証明書を入手し、ICカードリーダライタを購入し、e-Taxの開始届出を行い、コンピュータ環境を整え、必要なデバイスドライバーとソフトをインストールし、インターネットを通して国税庁に電子証明書を登録するなどの事前準備が必要であり、それに数日間かかってしまいました。

 そしてそれらの事前準備が済んだので、本日、実際の電子申告を行ったのですが、慣れない作業なので2時間ほどかかってようやく終了しました。

 電子申告を実際にやってみると、これを利用するためにはコンピュータと簿記と税に関するかなり詳しい知識が必要なことがわかりました。

 幸いウチのカミさんが簿記の資格を持っていて、僕がコンピュータの知識を持っているため、二人がかりで何とか申告することができました。しかし普通の人が個人で行うのは相当難しく、専門家である税理士や会計事務所向けのものであるような気がします。

 税務署は電子申告を普及させようと宣伝しているようですが、その割には事前準備と実際の作業が複雑で、マニュアルが整備されておらず、ソフトの使い勝ってが悪く、本気で広く普及させようと考えているとは思えません。(~o~)

 ともあれ、これで今年も来年以後も、申告会場に行って長時間イライラと待たされる必要は無いと思うと、苦労して電子申告をした甲斐があった気がします。(^o^)v

                            とものり

1038. 「曲がれ!スプーン」 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/25(金) 12:00:19
・「曲がれ!スプーン」本広克行監督、2009年、日本

 劇団・ヨーロッパ企画の舞台劇「冬のユリゲラー」を、「踊る大走査線」シリーズの本広克行監督が映画化した作品で、原作を書いた上田誠が脚本を担当しています。

 舞台では脇役であるテレビ局のAD役を長澤まさみが演じ、彼女を主役にしたため、完成度の高い舞台劇が、タレント人気で視聴率を取ろうとするテレビドラマのようになってしまっています。(^^;)

 この作品の前に、同じヨーロッパ企画の舞台劇「サマータイムマシン・ブルース」を同じコンビで映画化していて、そちらは上野樹里を原作どおりの脇役にしたせいか(^^;)、映画としてもかなり良くできていました。それに比べると、この作品はよりワンシチュエーション・ドラマ的である分だけ、映画に向いていないのかもしれません。

 それでも原作者が脚本を書いている上に、芸達者で存在感のある舞台俳優を揃えているため、完成度の高い元の舞台劇の良さをそれなりに味わうことができます。

 そして「サマータイムマシン・ブルース」はタイムパラドックス、この作品はエスパーと、どちらもSFの王道をテーマにしているくせに、どちらの作品も派手なキャラが入り乱れる波乱万丈のストーリーではなく、四畳半的な空間で小市民的な登場人物が織り成す、ちょっと心温まるエピソードといった感じでけっこう気に入りました。

 この作品に登場する芸達者な舞台俳優達を見ていると、彼等のような俳優に「キサラギ」のオタク達を演じてもらいたかった気がします。(^_-)

                            とものり

1037. ゲノム四方山話−核酸 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/22(火) 09:38:17
 1036番の書き込みの図にある、pre-mRNAの左端の「5'UTR」と右端の「3'UTR」は非翻訳領域(untranslated region)であり、遺伝情報を保護する蓋のようなものです。「5'」と「3'」というのは核酸(DNAとRNA)の構成成分であるリボース(五炭糖)の炭素原子の位置のことで、酸素原子から時計回りに数えて3番目の炭素原子の位置を3'位といい、4番目の炭素原子に結合したもうひとつの炭素原子の位置を5'位といいます。

 リボースの1'位に塩基が結合した化合物をヌクレオシドといい、ヌクレオシドの5'位にリン酸がエステル結合した化合物をヌクレオチドといいます。そしてヌクレオチドのリン酸が隣のヌクレオチドの3'位に結合し、それが鎖状に長く連結してポリヌクレオチドになったものが核酸つまりDNAやRNAです。

 このためDNAやRNAの左右の端は、リボースの5'位または3'位に別のヌクレオチドが結合していないことになります。これを「5'端」または「3'端」と呼び、5'端側を上流、3'端側を下流と呼んでDNAやRNAの向きを決めています。

 DNAやRNAの向きを上流(upstream)、下流(downstream)と呼んでいるのは、塩基配列を上流から下流に向かって解読すると正しい遺伝情報になるからです。これはデータ通信において、ビット流(bit stream)を流れのまま読むと正しいデータになり、反対から読んでも正しいデータにはならないことに似ています。

 BIT STREAMといえば、
遠い地平線が消えて 深々とした夜の闇に心を休める時

遥か雲海の上を音もなく流れ去る気流は 限りない宇宙の営みを告げています。

満天の星をいただく果てしない光の海を 豊かに流れ行く風に心を開けば

煌く星座の物語も聞こえてくる 夜の静寂(しじま)の何と饒舌なことでしょうか。

光と影の境に消えていった 遥かな地平線も瞼に浮かんでまいります。

日本航空があなたにお送りする音楽の定期便 ジェットストリーム。

皆様の夜間飛行のお供を致しますパイロットは 私 城達也です

という印象的なナレーションで始まるFMラジオの名番組「JET STREAM」を、往年の深夜放送ファンは懐かしく思い出すことでしょう。僕も青春時代にこの番組を聴いて、海外旅行に憧れたものでした。

 名ナレーター・城達也氏はこの番組のパイロット役を25年間続け、それを辞した2ヵ月後に鬼籍に入りました。そして現在では日本航空も鬼籍に入りかかっていますが(^^;)、この番組はパイロット役とスポンサーを変えて現在でも続いています。しかし若かりし頃に聞いた城達也氏のナレーションの印象が強すぎるせいか、氏がパイロット役ではないこの番組を聴いてもいまひとつしっくりきません。(~.~)


夜間飛行の ジェット機の翼に点滅するランプは

遠ざかるにつれ 次第に星の瞬きと区別がつかなくなります。

お送りしておりますこの音楽が 美しくあなたの夢に溶け込んでいきますように……。

ではまた 午前零時にお会いしましょう。

おやすみなさい

                            とものり

1036. ゲノム四方山話−RNA 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/19(土) 11:40:17
 DNAの遺伝子部分の暗号つまり塩基配列がmRNA(メッセンジャーRNA、伝令RNA)に転写され、それが核から出てリボゾームに移動し、そこにtRNA(トランスファーRNA、運搬RNA)がアミノ酸を運んできて蛋白質を合成するということは、大昔かじった分子生物学でも説明されていました。

 そして、このように遺伝情報がDNA→RNA→蛋白質と伝えられることを「ドグラ・マグラ」と呼び、記憶喪失中の精神病患者が語る狂気に満ちた幻想的な物語になる……というわけではなく(^^;)、「セントラル・ドグマ」と呼ぶことも知っていました。





 ところがやはり最近になり、遺伝子部分の塩基配列がmRNAに転写される時、まず最初にエクソンとイントロンがそのまま転写されて未成熟mRNA(pre-mRNA)が合成され、次にその中からイントロン部分が切り取られて成熟mRNAができることを知りました。w('o')w

 この未成熟mRNAからイントロンを切り取る過程をスプライシングと呼び、未成熟mRNAが成熟mRNAになる過程全体のことをプロセッシングと呼ぶそうです。

 急速に進歩している分野では次から次へと新しい用語が登場するため、オリジナルの用語を和訳した用語がひとつに確定しないうちに、オリジナルの用語をとりあえずカタカナで表したカタカナ語がデファクトスタンダードとして定着してしまいがちです。

 ゲノム分野とコンピュータ分野は、そういった面でもよく似ています。(^_-)

                            とものり

1035. ゲノム四方山話−遺伝子の構造 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/17(木) 17:28:48
 大昔、僕が分子生物学をかじった頃は、DNAの構造は解明されていましたが、遺伝子そのものの構造はまだ完全には解明されていませんでした。そのため今までは、「遺伝子は単にコドンがいくつも並んだもの」というかなり原始的なイメージを持っていました。

 ところが最近になり、ヒトの遺伝子は下図のような複雑な構造をしていることを知り、自分の分子生物学分野の知識はすっかり時代遅れであることを痛感しました。(~o~)

 上図の一番上の帯がDNAであり、遺伝子がまばらに存在していて、白い部分は今のところ意味不明なジャンク部分です。遺伝子の先頭(左端)には蛋白質合成プロセスを開始させる領域があり、これをエンハンサーといいます。エンハンサーに続く「CCAA」から「TATA BOX」までの領域はDNAがRNAに転写される転写開始部分を表す部分であり、プロモーターと呼ばれます。

 転写開始部分から転写終了部分の間には、エクソンとイントロンと呼ばれる領域が交互に並んでいます。エクソンは実際に蛋白質を合成するためのコドンが並んでいる領域であり、遺伝子の本体です。イントロンは蛋白質を合成するためのものではなく、遺伝情報翻訳時の補助的な働きをする領域ですが、その役目はまだ完全に解明されているわけではないそうです。

 エンハンサーやプロモーターやイントロンの存在は、何となくデータ通信におけるスタートビットやストップビット、そしてパリティビットの存在を連想させます。データ通信では、8ビットで表される1文字の前後に、文字の開始を表すスタートビットと終了を表すストップビットを付加し、さらに文字が正常に送られたかどうかをチェックするためのパリティビットを挿入します。

 遺伝情報はデータ通信以上に正確さが要求されるため、エラーチェック機能やエラー修復機能や情報の重複といった冗長性を沢山備えているはずです。遺伝子のイントロンやDNAのジャンク部分はそういった役割を持っているのではないかと、僕は勝手に憶測しています。

 ただしイントロンはエクソンと同じくらいの領域を占めていますし、ジャンク部分は遺伝子部分の9倍ほどもあるわけですから、遺伝情報の冗長性以上の役割を持っているような気がします。

 それこそ、老子や荘子が説いた「無用の用(一見、無用と思われるものが、実は大きな役割を果たしている)」の分子生物学的な実例なのかもしれません。(^_-)

                            とものり

1034. ゲノム四方山話−遺伝子の数 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/15(火) 18:05:15
 ヒトのDNAには約30億個ほどの塩基対があるということは、遺伝子の数も相当多いだろうと思うでしょう。ところが不思議なことにヒトの遺伝子は約3万個しかなく、約30億個の塩基対の中の3億個程度しか使っていないことがわかっています。

 つまり約30億文字で書かれた遺伝情報のうち、意味がわかるちゃんとした文章は約3万個しかなく、それは全体の10%程度であり、残りの90%は今のところ意味がわからない「ジャンク情報」というわけです。そして現在わかっている限りでは、この事情はヒトだけでなく他の生物でも同じようなものらしいのです。w(?o?)w

 これは宇宙の物質エネルギーの中で、目に見える物質が占めている割合はわずか5%程度であり、残りの95%は今のところ正体不明の暗黒物質(ダークマター)と暗黒エネルギー(ダークエネルギー)であることに何となく似ています。

 このゲノムのジャンク情報と宇宙の暗黒物質の存在は、自然が壮大な無駄をしているというよりも、自然について我々人類が解明した部分は、まだまだその程度のわずかな割合でしかないということを反映しているような気がします。

 それにしても、約60兆個もの細胞からできているヒトの遺伝子が約3万個しかないというのは不思議な気がします。ゲノムは遺伝子という要素で書かれた生物の設計図だとよくいわれますが、たった3万個の要素で60兆個もの細胞からなる生物の設計図を描けるとはとても思えません。

 そこでゲノムは生物の設計図というよりも、生物を作る時の勘所だけをメモした覚書のようなものではないかと、僕は思うようになりました。

 つまり生物はゲノムがなくてもある程度は組み立てられるものの、それではいつも同じものができるとは限らない、そこで規格どおりに作るための勘所——そこさえしっかり押さえておけば、後は自動的に組み立てられるという部分——を遺伝子としてメモした覚書がゲノムではないかと思うのです。

 そのように考えると、遺伝子が突然変異した場合、無茶苦茶な生物ができるわけではない理由がわかります。

 もしゲノムがきちんとした設計図ならば、その一部をランダムに書き換えた時、生存可能な生物がまともに組み立てられるとは思えません。しかし単なる覚書ならば、一部をランダムに書き換えてしまっても、組み立て現場(^^;)が適当に判断して、生存可能な生物を何とか組み立てることも可能でしょう。

 もちろん、そうして組み立てられた生物は規格ハズレにはなるでしょうが、規格ハズレ品が世の中を変革することは、どこの世界でもよくあることです。(^_-)

                            とものり

1033. ゲノム四方山話−コドン 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/13(日) 17:59:08
 1027番の書き込みの図のように、DNAの1本はリン酸とデオキシリボースという糖が交互に並び、そこにアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4種類の塩基がずらりとくっついた構造をしています。そしてアデニンとチミン、グアニンとシトシンが水素結合して塩基対を形成し、それによって2重らせんを構成しています。

 そしてよく知られているように、4種類の塩基の中の3種類の塩基を組み合わせたものが1つの単位になり、蛋白質を構成する20種類のアミノ酸に対応しています。この3つ1組の塩基のことをコドンといい、アミノ酸に対応するものだけでなく、蛋白質の合成開始を表す開始コドンや、合成終了を表す終了コドンもあります。

 興味深いことに、これらのコドンの意味はほぼ全ての生物で共通しています。つまり全ての生物のゲノム(遺伝情報)は、A、G、C、Tという4種類の文字の中の3文字を組み合わせた単語を使って書かれていて、その単語の種類と意味がほぼ全ての生物で共通しているということです。

 ちなみにヒトのゲノムは2mほどの長さのDNAで構成されていて、全部で30億個ほどの塩基対があります。つまりヒトの遺伝情報は4種類の文字を約30億文字使い、単純計算すれば約10億単語で書かれていることになります。

 人間の言語や文字のシステムは、非常に複雑で互換性がありません。その欠点をできるだけなくすように工夫されたコンピュータ言語や数学言語でさえ、かなり複雑で完全に互換性があるわけではありません。それに比べると、このゲノムシステムの単純さとほぼ完璧な互換性には驚かされます。w('o')w

 そして数学的に見ると、このシステムにはある程度の必然性があります。例えば塩基の種類が3種類しかないとすると、理論的には3×3×3=27通りのコドンができます。この場合、20種類のアミノ酸と対応するには十分ですが、開始コドンや終了コドンといったアミノ酸以外のコドンまで対応するには少々心もとない数であり、もう少し余裕が欲しいところです。

 また4種類の塩基を4個組み合わせてコドンを構成すると、4×4×4×4=256通りのコドンができます。これは必要以上に多い数であり、これではシステムを無駄に複雑にし、エラーが起こる可能性を増やすだけです。

 それに対して4種類の塩基の中の3種類でコドンを構成すると、4×4×4=64通りのコドンができます。これならば20種類のアミノ酸に対応し、しかもアミノ酸以外のコドンまで対応できるだけの余裕が十分にあります。これはシステムの単純さと、それによって表現できる情報の多様さのバランスをうまくとった、絶妙なシステムであると言えるでしょう。

 人間の言語もこれくらい単純で互換性が高いのなら、世界中の人々の相互理解が進んでもっと平和になるだろうし、僕も英会話や英語論文の解読で苦労することはないのに……と残念でなりません。(^^;)

                            とものり

1032. ゲノム四方山話−遺伝子座 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/10(木) 19:28:59
 以前は染色体をギムザ染色液で染めていましたが、最近は分染法という新しい染色法で染色するようになりました。この染色法では染色体を濃淡の横縞模様に染めることができるため、下図のように23組の染色体を識別しやすくなりました。

 この縞模様(バンド)には世界共通の名前が付けられていて、それによって遺伝子がある場所——これを遺伝子座と呼びます——を表します。例えば9番染色体は下図のような縞模様になっていて、その中の「9q34」という場所にABO式血液型の遺伝子があると言われています。

 この「9q34」の最初の「9」は染色体の番号であり、次の「q」は長腕を表し(短腕は「p」で表す)、次の「3」は長腕を濃いバンドで3つの領域に分けた時の3番目の領域を表し、最後の「4」は3番目の領域の中の4番目のバンドを表します。


 染色体には2つの染色分体がありますが、これらは全く同じDNAを持つコピー同士なので、縞模様も全く同じになります。そのため遺伝子の話をする時は、上図のように染色分体を単位にして考えるのが普通です。

 染色分体の中には1.4cm〜7.5cmほどの長さのDNAが折り畳まれて入っていて、46個の染色分体の中のDNAを全てつなぎ合わせると2mほどの長さになります。つまりヒトのゲノムは、2mほどの長さのDNAで構成されているわけです。

 そしてヒトには約60兆個の細胞があるので、ひとりのヒトのDNAを全てつなぎ合わせると約1200億kmにもなります。太陽系の直径が約100億kmといわれているので、驚くべきことにその12倍もの長さがあることになります。w('o')w

 さらにヒトは現在約70億人いるので、全人類のDNAを全てつなぎ合わせれば宇宙の果てまで到達できそうです。このため分子生物学的には、「Hand in Handで世界平和を!」よりも「DNA in DNAで宇宙征服を!(^o^)/」といったところでしょう。(^^;)

                            とものり

1031. ゲノム四方山話−鶏と卵 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/08(火) 18:05:31
 どちらが先かわからないことの例えとして、「鶏が先か、卵が先か?」ということがよく言われます。しかしこの例えは、生物学的にはあまり良い例えとはいえません。

 鳥は有性生殖するため、精子と卵子が受精して新しい個体が生まれます。そして「鶏」という新しい鳥ができた時は、鶏ではない種類の雄鳥と、鶏ではない別の種類の雌鳥が生殖して卵を産み、それが鶏になったか、あるいは鶏ではない鳥の精子か卵子の遺伝子が突然変異をし、それが受精してできた卵が鶏になったかのはずです。

 実際、人間による人為的な品種改良では、別種の鳥をかけ合わせたり、偶然生まれた突然変異種を選択したりして、これまでに新しい品種の鶏を沢山作ってきました。その時、最初にできるのは必ず新しい品種の卵です。

 放射能などによって遺伝子が突然変異をし、生物の成体がいきなり新しい生物に変貌するということは、恐怖映画などではよくありますが(^^;)、実際の生物では起こりません。生殖細胞で起きた突然変異が精子や卵子に引き継がれ、それが受精して新しい種類の生物が生まれるのです。

 ただ言葉の定義として、そうして生まれた卵のことを「鶏の卵」とは呼ばず、「○○鳥と××鳥をかけ合わせた卵」と呼び、卵から孵った雛を「鶏」と呼んだとしたら、言葉としては「鶏」が先にできた、という屁理屈をこねることもできます。(^^;)

 しかし僕としては、どちらか先かわからないことの例えとしては、鶏と卵よりも、「ターミネーターに命を狙われるサラ・コナーの息子が先か、それともその息子の命令でサラ・コナーの護衛役になり、やがて息子の父親になるカイル・リースが先か?」という例えの方が、より映画的で好きです。(^_-)

                            とものり

1030. ゲノム四方山話−ヒトの多様性 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/05(土) 18:22:29
 減数分裂の結果できる精子や卵子は、23個の染色分体の組み合わせによって多種多様なゲノム情報を持つことができます。数学をメシのタネにしている僕としては、その組み合わせの数くらい計算して見せないと格好がつかないでしょう。v(^^;)

 話を簡単にするために、染色体の組み換えがないと仮定して計算してみましょう。まず第一減数分裂によって23種類の相同染色体が2つの細胞に分かれる時、父親由来の染色体と母親由来の染色体がランダムに分かれます。この時、23種類の染色体についてそれぞれ2通りの選択肢がありますから、その組み合わせの数は2の23乗通りあることになります。

  23種類の染色体の組み合わせ数=223=8×1024×1024=8M(メガ)=約800万通り(23ビットの情報量)

この組み合わせ数は精子も卵子も同じですから、両者が受精すると8M×8M種類の受精卵ができることになります。

  受精卵の種類=8M×8M=246=64T(テラ)=約64兆種類(46ビットの情報量)

 このように1組の両親から生まれる子供は、64T(約64兆)通りの個性を持つ可能性があることになります。現在のヒトの個体数は約70億人ですから、その全員が別の個性を持つのに十分な多様性を持っているわけです。

 現在、インターネットで使用されているIPv4のIPアドレスは32ビットのアドレス空間を持つ、つまり4G(約4億)個のアドレスを識別することができます。インターネットができた当初はこれで十分なアドレス空間だと思われていましたが、インターネットの急速な普及によって、最近、IPアドレスがほとんど枯渇してしまいました。

 その先見性のなさに比べると、ヒトのゲノム空間を46ビットで構成した自然界の先見性は大したものです。

 しかし自然はこの戦略だけではまだ足らないと思ったのか、減数分裂時に染色体の組み換えをすることにより、64T通り以上のゲノムの組み合わせができるようにしました。組み換えの起こる場所はランダムですから、この巧妙な戦略によってゲノム空間は、事実上、ほぼ無限大になります。

 つまりセントラルドグマというかなり限定されたプロトコールに従い、遺伝子の突然変異がないとしても、ヒトの多様性つまりヒトの個性はほぼ無限であるということになります。

 「世の中には自分と同じ顔をした人間が三人いる」という伝説がありますが、確率論的には、残念ながらその可能性は非常に低いと言わなければならないでしょう。(^^;)

                            とものり

1029. ゲノム四方山話−減数分裂 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/03(木) 10:04:45
 体細胞分裂に対して、卵巣や精巣といった生殖細胞で起こる細胞分裂のことを減数分裂といいます。減数分裂と呼ばれるのは、細胞分裂によって染色体の数が半分に減った細胞ができるからです。

 体細胞分裂と違って、減数分裂では下図のように細胞が2回分裂します。最初の分裂(第一減数分裂)では、まず相同染色体が平行に並び、それが分かれて2つの細胞に分裂します。その際、父親由来の染色体と母親由来の染色体がランダムに2つの細胞に分かれます。

 さらにこの時、相同染色体同士で染色体の一部を交換し、父親由来の染色体の一部に母親由来の染色体が組み込まれ、母親由来の染色体の一部に父親由来の染色体の一部が組み込まれます。これによって新しい遺伝子の組み合わせ、つまり新しいゲノムを持つ染色体ができあがります。これは染色体の「組み換え」または「乗り換え」と呼ばれる現象で、多様性を確保するための巧妙な戦略のひとつです。











 原則として、遺伝情報は染色体単位で子孫に伝わります。そしてひとつの染色体には沢山の遺伝子があるため、それらの遺伝子はいつも一緒に子孫に伝わることになります。このため例えば「金髪碧眼の美人」と言われるように、金髪のヒトは必ず目が青く、鼻が高いといった具合に、別々の遺伝子が関与する複数の特徴がいつも同時に子孫に伝わることが多くなります。これを遺伝子の連鎖といいます。

 ところがこの減数分裂時の染色体の組み換えにより、「金髪緑眼だけど鼻ペチャでそばかすだらけ(*^^*)」といった、笑って笑ってキャンディス・ホワイト・アードレーのような国籍不明美少女キャラが生まれることになります。(^^;)

 次に2つの細胞それぞれで、体細胞分裂と同様に染色分体が2つに分かれて2番目の分裂(第二減数分裂)が起こり、4個の細胞ができます。精巣の場合、この4個は全て受精能力を持つ精子になりますが、卵巣の場合、1個だけが受精可能な卵子になり、残りの3個は消滅してしまいます。

 せっかく分裂したのに日の目を見ることなく消滅してしまうとは、3個の卵子はちょっと可哀想な気がします。でも数億個も旅立つのに、その中のたった1匹以外は全て死んでしまう哀れな精子に比べれば、まだましといったところでしょうか。(-人-)

                            とものり

1028. ゲノム四方山話−体細胞分裂 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/02/01(火) 21:15:14
 染色体がX字型をしているのは、謎の犯人Xによって殺害された被害者の左手の中指と人差し指が、ちょうどXのような型に交差して重ねられていて、それが犯人を指し示すダイイングメッセージであることを元俳優の名探偵が見抜いたため……というわけではなく(^^;)、細胞分裂に備えてDNAが複製されているからです。

 複製されたDNAは2本の姉妹染色分体になり、それらがほぼ中央にある動原体(セントロメア)と呼ばれる部分でくっついています。そして細胞分裂時に2本の姉妹染色分体が分離して、同じ遺伝情報を持つ2つの細胞になります。

 この時、古い細胞のことを親細胞といい、分裂してできた2つの細胞のことを娘細胞といいます。そして親細胞と全く同じゲノムを持つ娘細胞を作る細胞分裂のことを、体細胞分裂といいます。

 体細胞とは皮膚や内臓などヒトの身体を構成する各部分の細胞のことで、これらの体細胞は、毎日、多くのものが死んでいくため、それを補うために体細胞分裂によって絶えず新しいものが作られています。

 ちみなに生物の生殖や細胞分裂などの用語には、「姉妹」とか「娘」といった単語がよく用いられます。これは将来的にはY染色体が消滅して男性が消滅し、女性だけで単性生殖が行われるようになることを暗示している……わけではなく(^^;)、子供を作ることといえばやっぱり女性を連想するからでしょう。

                            とものり

1027. ゲノム四方山話−ヒトの染色体 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/29(土) 11:01:25
 染色体の数と形は生物種によって異なっていて、ヒトの場合は下図のように23対46本あります。これら23対の染色体は長いものから順に番号が付けられていて、1番から22番までは常染色体と呼ばれる普通の染色体であり、最後の23番は性染色体です。対になった染色体は相同染色体と呼ばれていて、一方が父親由来、もう一方が母親由来です。

 性染色体は男性と女性で形が異なっていて、女性はどちらも常染色体と同じようなX字型をしているのに対して、男性は片方の染色体が短くなっています。このため長い方をX染色体、短い方をY染色体といい、XXが女性、XYが男性になるのはご存知のとおりです。

 ヒトのY染色体上には雄性化因子(SRY遺伝子)があり、この因子のお陰でY染色体を持つ個体が男になります。生物は雌が基本であり、Y染色体がないかSRY遺伝子が欠損していると雌になってしまいます。

 Y染色体には相同染色体がなく、単独で存在するため、突然変異などで遺伝情報を失い、形態的にも小型化する傾向にあります。このため、将来はY染色体が消滅してしまうという説を唱える生物学者がいます。すこし前に、この説をマスコミがセンセーショナルに取り上げたため、世の中から男が消滅してしまうのではないかと気の早い心配をしている人がいるそうです。

 しかしY染色体が消滅する頃には他の遺伝子もかなり変異しているはずですから、ヒトは現在のヒトを共通祖先とするいくつかの亜種に分化しているか、それとも環境の変化に対応できずに絶滅している可能性の方が高いでしょう。(^^;)

 また、実際にY染色体を失ってしまった種(ネズミの一種)も存在します。しかしそのような種でも雌雄の性別は保たれているので、雄性化因子に依存しない性別の決定方法が生じていると考えられています。

 異なる性による有性生殖は、別々の個体が遺伝子を混ぜ合わせることによって多様性を増やし、環境の変化に対応しやすくするために採用した戦略のひとつですから、多様性さえ確保できれば単性生殖でもかまいません。

 紀元前4年頃、ユダヤのベツレヘムという町にガリヤラのナザレから来た夫婦が滞在していて、そこで夫人が単性生殖によって男の子を産み、その男の子は随分変わった性格だったという伝説があります。もしこの伝説が事実なら、単性生殖で生まれたヒトの子供はY染色体もSRY遺伝子も欠損しているにもかかわらず男性になり、しかも多様性を保つということになります。(^^;)

                            とものり

1026. ゲノム四方山話−二重らせん 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/27(木) 10:36:00
 DNAは長い糸状の構造をしており、染色体は2本のDNAがお互いに巻きつき合っ
た二重らせん構造をしています。

 このことを推理したのはワトソンとホームズで、彼等はロンドンのベーカー街
221Bにあるアパートで共同生活をしていた……というわけではなく(^^;)、モー
リス・ウィルキンスとロザリンド・フランクリンがX線結晶構造解析によって最
初に発見しました。

 しかし彼等がその研究成果を発表する前に、ジェームズ・ワトソンとフランシ
ス・クリックがその研究成果をパクって発表したため、DNAの二重らせん構造の
発見は彼等の功績になってしまいました。(~.~)

 この「先に言ったもん勝ち!v(^o^)」というのは、科学界でよくあることです。
特に現代では「英語で先に言ったもん勝ち」であり、英語圏以外の国の科学者は
かなり損をしています。(~_~)

 科学雑誌に論文を投稿すると、査読(review)といって、その論文の内容を色々
な分野の専門家が吟味します。

 そしてたいていの場合は、査読者(reviewer)が論文執筆者に色々とイチャモン
を付け、論文執筆者はそのイチャモンに対して回答したり、論文を修正したりし
ます。

 その結果、その論文の雑誌への掲載が受理(accept)されるか、それとも拒否
(reject)されるかが決まります。

 海外の科学雑誌に英語論文を投稿した場合、同じような内容の論文でも、英語
圏の研究者が書いたものは受理されて、非英語圏の研究者が書いたものは拒否さ
れるということがよくあります。

 この背景には、論文を書いた研究者と査読者の間に政治的な関係がある——例
えば、研究者の師匠と査読者が同じ大学の同窓生だった(^^;)——という要因も
もちろんありますが、英語を母国語としていない研究者にとって、査読者のイチ
ャモンに明確に答えるのが難しいということも大きな要因になっています。

 英語を母国語にする研究者は言葉巧みに弁明することができますが、英語を母
国語にしない研究者はどうしてもたどたどしい言い訳になってしまいがちであり、
査読者に納得してもらうのが難しいのです。(~o~)

                            とものり

1025. ゲノム四方山話−染色体 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/25(火) 18:17:41
 近頃は仕事で遺伝子関係のデータを取り扱う機会が増えたので、ゲノムに関す
る四方山話をつれづれなるままに書くことにしましょう。(^_-)

 ゲノム(Genome)は遺伝子(Gene)と染色体(Chromosome)を合わせた造語で、ある
生物種が持っている遺伝情報全体のことです。

 遺伝子の実体が細胞核に含まれるDNA(DeoxyriboNucleic Acid、デオキシリボ
核酸)であることは、今ではほとんどの人が知っていると思います。

 したがってゲノムとは、具体的にはDNAによって構成された遺伝情報だという
ことになります。

 DNAは様々な長さの断片に区切られて細胞核の中に詰まっていますが、細胞分
裂の際にはその断片が染色体の形態を取り、染色体単位で分裂して遺伝情報を伝
えていきます。

 染色体と呼ばれるわけは、染色液によってよく染まる染色質(DNAとヒストンと
いう蛋白質から成る物質)からできているからです。

 ただしDNAがこの形態を取るのは細胞分裂の時だけであり、普段は折り畳まれ
て細胞核の中に詰まっています。

 このため普通の細胞をいくら顕微鏡で覗いてみても、残念ながら染色体は見え
ません。

 そのことを知らなかった若かりし頃の僕は、タマネギの細胞を顕微鏡で覗いて
やたらと不思議がったものでした。(^^;)

                            とものり

1024. エントロピーと生命と宇宙−3 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/22(土) 12:10:56
 一方、宇宙全体を閉鎖系と考えると、恒星や銀河というものは局所的にエント
ロピーの低い秩序状態であり、これらが形成されることによって宇宙全体のエン
トロピーがより速やかに増大していると解釈することができます。

 実際、恒星とは原子力レベルの炎であり、これが形成されることによって物質
がより速やかに熱エネルギーつまり光子に変わります。

 また恒星が形成する銀河とは宇宙レベルの渦巻きであり、これが形成されるこ
とによって重力エネルギーがより速やかに熱エネルギーに変わります。

 さらに太陽と惑星から形成される太陽系も銀河と同じような宇宙レベルの渦巻
きであり、重力エネルギーを速やかに熱エネルギーに変換する役目を果たしてい
ます。

 1960年代に、地球を巨大な生命体のようなものと考える「ガイア理論」または
「ガイア仮説」というものが提唱されました。

 これは、地球と生物が相互に関係し合って環境を作り上げ、その環境を保持し
ていく自己調整能力を持っていることから、地球全体を巨大な生命体のようなも
のと捉える理論です。

 この理論はギリシア神話の女神「ガイア」にちなんだ印象的な命名と、エコロ
ジーの流行によってマスコミでも盛んに取り上げられました。

 地球も生物も、系全体のエントロピーを効率的に増大させるために発生した、
局所的にエントロピーの低い秩序状態だと考えれば、これらが相互に関係し合っ
て秩序状態を維持していくのは当然です。

 つまりエントロピーという面から見れば、生物も地球も恒星も銀河も、全て風
呂桶の渦巻きや炎のようなものであり、

 「消えろ、消えろ、つかの間の灯火…人生は歩きまわる影法師にすぎぬ」

というマクベスの名ゼリフは、まさに正鵠を射たものといえるでしょう。(^_-)

               終わりです        とものり

1023. エントロピーと生命と宇宙−2 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/21(金) 10:13:26
 炎の代わりに、通常よりもエネルギー状態が低い複雑な反応中間体を形成し、
それによって化学反応を速やかに進ませる役目をする物質が触媒です。

 生物は蛋白質によって形成された触媒の塊であり、化学反応を速やかに進め、
その時発生するエネルギーで生命を維持しています。

 そのことから、生物とはエントロピーをより効率的に増大させるために発生し
た局所的にエントロピーが低い秩序状態であり、炎と同じようなものであると考
えることができます。

 炎が物質の供給を受け、物質が酸化して系全体のエントロピーを増大させるの
を助けると当時に、酸化エネルギーを利用して炎自体を維持しているように、生
物も物質を取り込み、それが化学反応を起こして系全体のエントロピーを増大さ
せるのを助けると同時に、反応エネルギーを利用して生命を維持しているわけで
す。

 事実、生物がいない状態よりも、生物がいる状態の方が系全体のエントロピー
はより速やかに増大します。

 そして生物の進化と呼ばれる現象は、基本的には系全体のエントロピーをより
速やかに増大させる方向に生物の構造を変えていて、その最たるものが人類に他
なりません。

 そのように考えると、生物が環境を破壊してエントロピーを増大させるのは必
然的な宿命であり、環境を破壊しては役目を終えて滅亡し、破壊された環境に適
応した次なる生物が繁栄してさらなる環境破壊を繰り返し、エントロピー最大の
熱死状態に向かって突き進むということになります。

               続きます         とものり

1022. Re[1021]:エントロピーと生命といえば 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/21(金) 10:05:39
>Yasさん

>>エントロピーと生命で思い出したのが、福岡伸一教授の「生物と無生物のあいだ」です。
>>なかなか面白い内容でした。
>>それに、その本でも紹介されていた理論物理学者のシュレディンガーの「生命とは何か」は必読ですね。

 僕も、若い頃にシュレディンガーの本を読んでかなり影響を受けましたよ。何しろ
マルクスとシュレディンガーを読むことが、我等理学部の学生の流行でしたからね。v(^^;)

 その頃は分子生物学が時代の最先端で、化学科の学生だった僕は、自分が受ける化
学の講義をサボって、分子生物学の講義室にもぐりこんで講義を聴いたものでしたよ。

 福岡伸一教授の本は、内容的には既に知っていることが大半でしたが、僕がぼんや
りと考えていたことと同じような趣旨だったので、意を強くしましたね。(^o^)v

 ただ、仕事の関係で遺伝子関係の研究者と知り合い、色々と話を聞いているうちに、
今は生命に対する考えが微妙に変わってきています。

 そんなよしなしごとを、つれづれなるままに書いてみたいと思っています。(^_-)

                        とものり

1021. エントロピーと生命といえば 投稿者:Yas 投稿日:2011/01/20(木) 23:09:52
エントロピーと生命で思い出したのが、福岡伸一教授の「生物と無生物のあいだ」です。

なかなか面白い内容でした。
それに、その本でも紹介されていた理論物理学者のシュレディンガーの「生命とは何か」は必読ですね。

1020. エントロピーと生命と宇宙−1 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/20(木) 09:30:43
 当館の「閑話閑人・エントロピー増大の原理(http://www.snap-tck.com/room04/c01/kanwa/kanwa04.html#entro)」
に書いたように、熱力学によれば閉鎖系(孤立系)のエントロピーは増大し続け、
最終的にはエントロピー最大の無秩序状態(熱死状態)になると予想されます。

 しかし系の規模が大きい場合、局所的にエントロピーが低い状態を作ることに
より、系全体のエントロピーがより速やかに増大することがあります。

 例えば風呂桶から水を排出する時、渦巻きという局所的にエントロピーの低い
秩序状態を作ることにより、渦巻きがない時に比べてより速やかに排水すること
ができます。

 また物質が酸化する時、炎という局所的にエントロピーが低い秩序状態を作る
ことにより、炎がない時——例えば鉄が錆びる時——よりも速やかに酸化が進み
ます。

 物質が酸化するためには、一旦エネルギー状態が高い反応中間体を形成し、そ
れからエネルギー状態が低い酸化物に変化する必要があります。

 炎はその反応中間体を形成するためのエネルギーを提供する場であり、それに
よって酸化反応が速やかに進むのです。

               続きます         とものり

1019. 進化と分化 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/18(火) 16:59:49
 「進化した生物ほど複雑で知能が発達していて、人間は進化の頂点である」と
いう誤解や、「人間はサルから進化したのだから、今生きているサルはやがて人
間に進化する」というありがちな誤解は、「進化」という言葉に問題があるのか
もしれません。

 「時間の経過に伴う生物集団中における遺伝子頻度の変化」という進化の定義
からすれば、「分化」という言葉の方がより適切な気がします。

 人間とサルは両方の種の共通祖先から分化し、それぞれ独自に環境に適用した
生物であり、人間の方がサルよりも進化しているというわけではありません。

 それと同様に、細菌は大昔から進化していない低級な生物であり、人間の方が
より進化した高級な生物であるというわけでもありません。

 細菌も環境の変化に応じて同じように進化しており、共通祖先であるLUCAから
進化していた時間は人間と同じです。

 ただ細菌は環境適応能力が高く、しかも単独生存可能生物ですから、進化によ
って身体の構造を大きく変える必要はありませんでした。

 それに対して多細胞の捕食生物は環境適応能力が低く、しかも”仁義なき戦い
(^^;)”である捕食連鎖の渦中にいたため、ちょっとした環境の変化や、捕食生
物同士のパワーバランスの変化に応じて、身体の構造を大きく変える必要があり
ました。

 これは、まっとうな仕事をしている一般人の社会が比較的安定しているのに対
して、仁義なき戦いに明け暮れるヤクザの社会がやたらと不安定なことと同様で
す。

 つまり細菌は最初からある程度完成した生物だったので、進化によって身体の
構造を大きく変える必要はなかったのに対して、人間の祖先である多細胞の捕食
生物は不完全な生物だったので、進化によって身体の構造を大きく変える必要が
あったというわけです。(^_-)

                            とものり

1018. 系統樹−地動説バージョン 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/17(月) 11:43:30
 しかし現在では、生物の分類は形態学的なものと遺伝子的なものを総合して分類するようになっていて、しかも人間中心主義から脱却した系統樹を描くようになりつつあります。

 遺伝子の研究が大きく進んだ結果、進化と進歩は全く別の概念であり、進化は必ずしも器官の発達や複雑化をもたらすわけではないし、また知能を発達させるとも限らない、ましてや人間が進化の頂点であるという考えは間違いだということがわかってきました。

 そして進化とは「時間の経過に伴う生物集団中における遺伝子頻度の変化」であり、人間は他の生物と同じく環境に適応し、枝分かれしながら進む進化系統樹の末端の枝のひとつにすぎないと認識されるようになってきました。

 その結果、現在の系統樹は、下図のように根の無い丸い潅木の形で描かれることが多くなりつつあります。



 この系統樹では全生物の共通祖先LUCAが中心に位置し、そこから古細菌ドメインと真正細菌ドメインが枝分かれし、さらに古細菌ドメインから真核生物ドメインが枝分かれしています。そして円周に位置する枝の先が現存する生物であり、全ての生物が平等に扱われています。

 この系統樹では人間は真核生物ドメインの動物界の1つの枝にすぎず、進化の頂点でも万物の霊長でもありません。したがってこの系統樹は生物平等主義に基づいた、「生物界の地動説的系統樹(^^;)」といえるでしょう。

              終わりです         とものり

1017. 系統樹−天動説バージョン 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/17(月) 11:42:49
 「生物多様性についての由無し言」で生物の進化について少し話題にしたついでに、生物の進化や分化を樹木の形で図示した系統樹を紹介しましょう。

 遺伝子の構造が解明される前は主として生物を形態学的に分類していて、しかも人間中心主義に基づいて系統樹を描いていました。

 このため以前の系統樹は、下図のように大地に根を張った大木のような形で描かれました。現在でも、系統樹というとこのような図をイメージする人が多いと思います。



 この系統樹は上に行くほど進化した生物であり、人間は進化の頂点に君臨しているというイメージで描かれています。これは「人間は万物の霊長であり、生物界は人間を中心にして回っているのだ!p('へ')」という人間中心主義に基づいた、「生物界の天動説的系統樹(^^;)」です。

               続きます         とものり

1016. 生物多様性についての由無し言−9 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/15(土) 11:05:52
 それとは逆に、例えば有機物を分解する単細胞生物である腐敗菌が絶滅すれば、
生物の死骸や排泄物が分解されず、生物の身体を形成する元素が循環されなくな
って、植物も動物も昆虫もまたたくまに絶滅してしまうでしょう。

 その意味では、生物多様性の保護のためには、鯨や白熊を保護するよりも腐敗
菌などの細菌を保護する方が重要ということになります。

 しかし現在の生物多様性の保護議論や環境保護議論で、”腐敗菌を絶滅から救
え!p('o')”といったスローガンが主張されることはなく、細菌保護キャンペー
ン(^^;)が展開されることもありません。

 むしろ乳酸菌など一部の”善玉菌”と勝手に分類された細菌を除いて、腐敗菌
などの細菌は人間から目の敵にされ、”消毒”と称してジェノサイド(^^;)の標
的にされることが多いでしょう。

 そういった人間中心主義に基づいた生物多様性の保護議論や、イメージだけの
環境保護議論のおかげで、生物多様性が本当に保護されることも、環境が本当に
保護されることもなく、長い目で見ればヤクザな捕食生物や寄生生物は絶滅への
道を確実に歩むことになります。

 この皮肉な状況を横目で眺めて、まっとうな単独生存可能生物は密かにほくそ
笑んでいるのではないでしょうか。v(^^;)

              終わりです         とものり

1015. 生物多様性についての由無し言−8 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/14(金) 11:16:40
 そのような大多数の”まっとうな”単独生存可能生物から見れば、生物多様性
の保護とか環境保護という議論は、少数の”ヤクザな”捕食生物や寄生生物の身
勝手な議論でしかないでしょう。

 彼等は、そんなナンセンスな議論をするよりも、不届き千万な捕食や寄生をや
めて単独で生存できる”まっとうな”生物に更生するか、それとも生物界全体の
ために、”ヤクザな”捕食生物や寄生生物は速やかに絶滅して欲しいと思ってい
ることでしょう。(^^;)

 実際問題として、たとえ鯨や白熊が絶滅したとしても、それを観光資源にして
利益を上げている一部の人間が困るだけであり、生物界全体にとってはほとんど
何の問題にもなりません。

 それどころか約170万種の多細胞生物が全て絶滅してしまったとしても、3000
万種以上もいる生物界全体にとってはそれほど大きな問題にはなりません。

 事実、生命が誕生した約35億年前から多細胞生物が誕生する約10億年前までの
約25億年間もの間、単細胞生物達は平和に暮らしていたのです。v(^_-)

               続きます         とものり

1014. 生物多様性についての由無し言−7 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/13(木) 11:37:56
 こういった捕食生物が出現すれば、次はその捕食生物をそれよりも大きな生物
が捕食するという、”泥棒の上前をはねる大泥棒(^^;)”が出現するのは当然の
成り行きです。

 そして他の生物を捕食するには身体が大きい方が有利なため、捕食する真核生
物は多細胞生物へと進化し、それぞれの細胞が生命活動の一部を担当するように
なります。

 そうなると後はもう単独で生存する能力はできるだけ捨て去り、他の生物を捕
食する能力だけを高めた、身体の大きい捕食生物が次から次へと出現するという
捕食競争の連鎖になります。

 この生命泥棒同士の”仁義なき戦い(^^;)”の連鎖がいわゆる「食物連鎖」で
あり、食物連鎖を形成する多様な生物群が生物多様性の中核になります。

 このように食物連鎖は単独で生存できる生物の存在の上にアグラをかいたもの
であり、彼等がいなければ成り立たない砂上の楼閣のようなものです。

 このため生物全体から見れば、わずかな種類の生物だけが関係しているのは当
然のことです。

 これは、まっとうな仕事をしている一般人がいなければ泥棒は存在できず、し
かも一般人に比べると泥棒はわずかな数しか存在できないのと同じ理屈です。

 そして泥棒の被害にあった人以外の大多数の一般人は、泥棒同士の”仁義なき
戦い(^^;)”とは全く無関係に生活しているのと同様に、食物連鎖に関係しない
大多数の単独生存可能生物は、生物多様性とは無関係に単独で生存することがで
きます。

               続きます         とものり

1013. 生物多様性についての由無し言−6 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/12(水) 09:43:59
 真核生物の構成要素である古細菌と真正細菌は、共生によって生命活動の一部
だけを担当するようになり、どちらも単独では生存できません。しかし真核生物
としては単独で生存することができます。

 ところが共生という便利な関係に味をしめたのか(^^;)、一部の真核生物は色々
な真正細菌や真核生物と共生するようになります。

 中には相手の能力を借りるだけで、相手にとっては利益にならない”寄生”も
あり、それにアグラをかいた真核生物は、やがて単独で生存する能力を失った寄
生生物になっていきます。

 しかし寄生生物はまだ罪が軽い方で、そのうちに比較的身体が大きい一部の真
核生物が他の生物を取り込み、その生物が生産した生成物を横取りして自らの生
命活動に利用し、その生物を破滅させるという、実にけしからんことを始めます。

 この不届き千万な”やらずぶったくり行為(^^;)”のことを、「生命泥棒」と
はいわずに「捕食」といいます。

 共生や寄生と違って捕食は相手の生物を殺してしまうので、次から次へと他の
生物を取り込む必要があります。

 そしてそれにアグラをかいた生物は、寄生生物と同じように他の生物に依存し、
しかもその生物を殺してしまうという、寄生生物よりも悪どい捕食生物になりま
す。(-"-)

               続きます         とものり

1012. 生物多様性についての由無し言−5 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/11(火) 11:11:18
 ある時(約20億年前)、一部の古細菌が一部の真正細菌を細胞内に取り込み、協
力して生命活動を行う共生を始めました。

 取り込まれた真正細菌の一部は、やがて光合成を行う葉緑体や、酸素を利用し
て生命活動に必要なエネルギーを生成するミトコンドリアになります。

 共生した古細菌と真正細菌は、それぞれ独立に遺伝子を子孫に伝達しようとし
ました。

 取り込まれた真正細菌は細胞膜に囲まれていたため、その内部の遺伝子は守ら
れていました。しかし古細菌の遺伝子は細胞の中に裸のまま存在していたので、
それを膜で包んで細胞核として保護することにしました。

 そのため、この細胞核を持つ共生生物のことを真核生物(ユーカリオート、
Eukaryota)といいます。

 そしてこの真核生物から後に植物や昆虫や動物が派生し、その中の1種類が人
間になります。

 さらにその後、人間のミトコンドリア遺伝子のイブが、遺伝情報の主導権を握
ろうとして人間に反乱を起こす……というストーリーの傑作SFホラー小説が、瀬
名秀明の「パラサイト・イブ」です。(^_-)

               続きます         とものり

1011. 生物多様性についての由無し言−4 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/10(月) 11:12:17
 当然のことながら、LUCAは環境から物質を直接取り込み、単独で生存できる生
物であり、生命活動の全てを1つの細胞で行うことができる単細胞生物だったは
ずです。

 やがてLUCAが古細菌(アーキア、Archaea)と真正細菌(バクテリア、Bacterium)
に分かれます。これら2系統——生物学分野では「2ドメイン」といいます——の
生物には細胞核がないため、まとめて原核生物(プロカリオート、Prokaryota)と
呼ばれることがあります。

 古細菌は比較的単純な生物であり、LUCAの直系の子孫と考えられているのに対
して、真正細菌は多様な能力を持つ複雑な生物です。

 例えば、ある真正細菌は光合成によって生命活動に必要な物質を合成し、その
副産物として、それまでの生物にとって猛毒である酸素を生成する能力を持って
います。

 そして別の真正細菌は、その猛毒の酸素を利用して生命活動に必要なエネルギ
ーを生成する能力を持っています。

 また生物の必須元素である窒素を取り込む能力や、有機物を分解して無機物に
する能力を持つ真正細菌もいて、それらの真正細菌の能力を借りなければ、人間
を代表とする多細胞生物は生存することができません。

 それに対して古細菌と真正細菌は、生命活動の全てを1つの細胞で行うことが
でき、単独で生存できる”まっとうな(^^;)”生物です。

 いわば古細菌と真正細菌が自立した一人前の生物であるのに対して、人間を代
表とする多細胞生物は他の生物に依存する半人前の生物といえるでしょう。(^^;)

               続きます         とものり

1010. Re[1009]:外来生物 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/09(日) 20:15:36
>Yasさん

 明けましておめでとうごさいま〜す!(^o^)/

>>クニマスは秋田県田沢湖の固有種だったと言うことですから、
>>山梨の西湖では人為的な国内外来種という事であり、生物多様性の保全に反する事となります。

 これは「生物多様性についての由無し言」のテーマのひとつでもありますが、生物
多様性保護議論は人間中心主義に基づいたものであり、科学的というよりも政治的な
議論ですから、議論を進めていくと必ずどこかで矛盾を起こします。

 今回のクニマス騒動も、その典型のような出来事ですね。

>>あまりこの件では、マスコミは報道しないですねぇ。

 今回の騒動にはマスコミに人気のある”さかなクン”がからんでいたので、マスコ
ミが大きく取り上げましたが、そうでなかったら、単なるトピックスとして地方ニュ
ースだけで取り上げられるか、それとも全く取り上げられなかったと思いますよ。

 新種の発見とか絶滅種の再発見という出来事は、生物学分野ではそれほど珍しいこ
とではありませんからね。特に微生物の新種発見はけっこうありますが、マスコミは
まるっきり無視していますからね。(^^;)

                        とものり

1009. 外来生物 投稿者:Yas 投稿日:2011/01/09(日) 17:41:05
今年も宜しくお願い致します。

生物多様性といえば、いま話題のクニマスですね。
既に絶滅したと思われていたのが、別の湖にいたという事で世間を騒がせてますけど
今後、このクニマスをどう扱うかの問題に非常に興味があります。
クニマスは秋田県田沢湖の固有種だったと言うことですから、
山梨の西湖では人為的な国内外来種という事であり、生物多様性の保全に反する事となります。
あまりこの件では、マスコミは報道しないですねぇ。


1008. 生物多様性についての由無し言−3 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/09(日) 11:19:14
 そもそも生物は蛋白質でできた酵素という触媒の塊であり、外界から物質を取
り入れて酵素の働きで化学反応を起こさせ、それによって生じるエネルギーと生
成物で生命活動を維持しています。

 その際、必要な物質は全て環境から直接取り込むのが本来であり、初期の生物
は全てそうした能力を持っていました。

 現在知られている全ての生物は、同じ遺伝方式(DNA→RNA→蛋白質合成という
方式で、「セントラルドグマ」という)とほぼ同じ遺伝コード(DNAを形成する4種
類の塩基の中の3種類の塩基が1つのアミノ酸に対応する時のコードで、「コドン」
という)を使用しています。

 遺伝コードには理論的に多くの種類(4×4×4=64通り)がありますが、現在知
られている生物はその中の一部しか使っておらず、しかもそれがほぼ全ての生物
で共通しているのです。

 使用されている一部の遺伝コードには特別な必然性はないので、これは考えて
みれば不思議なことです。

 そこで初期の生物は様々な遺伝方式と遺伝コードを持っていたが、その中のた
だ1種類の生物だけが繁栄して他の生物は絶滅し(またはまだ発見されていない)、
それが現在知られている全生物の共通の祖先になったという、共通祖先(common
descent)説が提案されています。

 その共通祖先のことを「LUCA(ルカ、Last Universal Common Ancestor)」とい
います。

               続きます         とものり

1007. 生物多様性についての由無し言−2 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/08(土) 15:19:45
 現在の既知の約175万種の生物の内訳は、動物、植物、昆虫などの目に見える
多細胞生物が約170万種で、残りの約5万種が細菌などの目に見えない微生物です。

 既知の約5万種の微生物はたまたま人間と直接的・間接的に関係があったため、
人間によって発見されて命名されただけです。人間と関係がない微生物は発見さ
れにくく、それが残りの約2825万種のUML(Unidentified Mysterious Life、未確
認生物(^^;))の大半を占めているのです。

 そして多くの微生物は、他の生物の力を借りずに単独で生存できる能力と、か
なり苛酷な環境でも生存できる能力を持っています。

 それに対して人間を代表とする約170万種の多細胞生物は、他の生物——最終
的には単独で生存できる微生物——の力を借りなければ生存できない”寄生生物
(^^;)”であり、しかも非常に限られた環境でしか生存できません。

 つまり全生物のうち圧倒的多数のものは単独で生存できる生物であり、残りの
ごくわずかな生物は、それらの生物に依存した寄生生物なのです。

 このため生物多様性の保護とか環境保護というのは、生物全体から見ればごく
わずかにすぎない寄生生物を中心にした、身勝手で偏った議論であるということ
になります。

 そして人間の利益に益するか害するかという目先の現象だけで、生物を「益獣
/害獣」とか「益虫/害虫」などと呼んでエコ贔屓したり、人間の利益を「地球
に優しい」とか「地球温暖化」などと言って生物全体の利益にすり替えるのは、
人間中心の身勝手で傲慢な考えです。(-"-)

               続きます         とものり

1006. 生物多様性についての由無し言−1 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/07(金) 20:35:18
 960番の書き込みのPSで、日本固有の生物を外来生物が脅かしているから、そ
れらを排除すべきであるという考えは、生物多様性の保護とは矛盾するという趣
旨のことを書きました。

 それと同様に、COP10がらみで喧伝されている生物多様性保護議論は人間中心
主義(自然環境は人間が利用するための存在である、または人間がもっとも進化
した存在であるという主義)に基づいた議論であり、矛盾・誤解・曲解に満ちて
います。(^^;)

 現在、地球上には500万種〜1億種(よく使われる推定値は約3000万種)の生物が
いると考えられていて、そのうち人間によって命名されている既知の生物は約
175万種ほどです。

 仮に現在の生物を約3000万種として、人間によって命名されていない残りの約
2825万種の生物は全てUMA(Unidentified Mysterious Animal、未確認動物)かと
いうと(^^;)、さにあらず、ほとんどは微生物と考えられています。

               続きます         とものり

1005. 三人のレンガ職人−蛇足バージョン 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/01/05(水) 20:10:14
 この寓話を思い出したついでに、フリーランスになって気ままで自堕落な生活
をしている言い訳にしようと、次のような蛇足バージョンも考えました。(^_-)

--------------------------------------------------------------------------
(前半は正統派バージョンと同じ)

 四人目の職人は少しへそ曲がりだったので、「大聖堂ができれば街中の人が喜
ぶ」ということが本当かどうかを知るために、大聖堂を建築することになったい
きさつと、建築を命じた人のことを調べてみました。

 その結果、大聖堂は権力者が自分の権力を誇示するために建てようとしており、
建設資金を調達するために庶民に重い税金をかけていることと、キリスト教以外
の宗教を信奉する人達を迫害していることがわかりました。

 そこで職人はその仕事を辞め、権力者によって重税をかけられている貧しい人
達や、迫害されて苦しんでいる人達のために、レンガを積んで住居を作ることに
しました。

 大聖堂建設の仕事と違って、その仕事の報酬は貧しい人が提供してくれる粗末
な食事だけでしたし、世間の評価も低かったのですが、職人はその仕事に喜びを
感じるようになりました。


 ……というような職人になりたくて、僕は会社を辞めてフリーランスになった
のです——というような言い訳を我と我が身につぶやいて、今日もまた気ままで
自堕落な生活を楽しんでいます。v(^^;)

                 終わりです      とものり

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