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1976.
中心極限定理と正規近似
投稿者:
F.Y.Edgeworth
投稿日:2024/08/27 (Tue) 08:20:18
中心極限定理と正規近似についての質問です.
推測統計では「有限の平均μ,正の標準偏差σを持つ分布Pに従う独立な確率変数列の最初のn項の相加平均X_{n}(標本平均)を標準化したものは,nが十分大きいとき近似的に標準正規分布N(0,1)に従う」のように中心極限定理(の一つ)を述べ,それを根拠として,nが有限の場合の確率の近似値として正規分布から得た確率を利用(正規近似)するようです.
一方,実数全体の集合をR,整数全体の集合をZとすると,上記の定理は累積分布関数列の一様収束性
∀ε(ε>0→∃m(m∈Z∧∀n(n∈Z∧m<n→∀x(x∈R→|P((X_{n}-μ)/(σ/√{n})≦x)-N(0,1)((-∞,x])|<ε))))
であり,mは誤差の上界ε,分布P,標本平均の列(X_{*})に依存します.
これに対して推測統計では,εを指定せず,P,(X_{*})も(当然)未知のまま「標本の大きさnは~以上ならよい」等と述べることが少なくなく,一般の人々が
(1)「nが十分大きいとき」というn→∞での挙動を表す表現を具体的なnの値に対するものと誤解すること
(2)「近似」という真値と近似値の差を誤差の上界で押さえることを指す表現を「およそ」,「正確ではないかもしれないが」といった意味に捉えること
を助長,容認しているように見えます.
「極限値の値が分かっても,有限の番号の項の値については何も分からない」という極限の基本的な性質に照らして,中心極限定理が正規近似の根拠となりえず,また「近似」を構成するための誤差の上界の指定もない(つまり,正規近似で得た確率と真値との差を評価できない)状況の下で,推測統計では,中心極限定理と正規近似とをどのように結び付けているのでしょうか?